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2011/12/19 サマンサぱみゅサ設立。 2012/9/18 サマンサぱみゅサ公式HP設立。 2012/9/18 サマンサぱみゅサ初公式大会出場予定。AVAODLseason2 ビギナーリーグ 大会詳細 http //ava.pmang.jp/competitions/11 2012/9/19 オリエンタルユーロBOX販売中止決定 [情報]DSRのヘビーストック2は付けない方がいいみたいです。個人の勝手ですが!
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前ページ次ページゼロのペルソナ 「やっと終わった……」 ルイズは自分の失敗魔法による爆発でめちゃくちゃにしてしまった教室の掃除がやっと終わり食堂に来ていた。 魔法も使わず一人で机の片付けをしたのだからくたくただ。 ふらふらと座る場所を探していると声をかけられた。 「あらもう片付け終わったの?」 すでに食事の席に着いているキュルケだ。その対面の席にはタバサが座っていた。 からかうような口調であったが疲れているのでルイズはムキになる気力もない 「もう、じゃないわ。やっとよ……」 憮然と答えながらルイズはキュルケの隣の席に座る。他に席がないからだ。そうでなければキュルケの隣になど座るものか。 と、ルイズは心の中で誰にいうわけでもない言い訳をする。 「ねえねえキュルケチャン?」 朝と同じく使い魔でありながら魔法使いの食事の席に着いていたクマが言った。そのことにルイズは不機嫌そうな顔を見せるが キュルケはそんなルイズに構う様子もない。それは陽介を自分の隣に座らせているタバサも同じだ。 「なによ、クマ?」 「なんだか、あっちのほうが騒がしくないクマ?」 とクマはルイズが来た方向とは反対側、つまり食堂の奥の方を指差す。いや、親指とそれ以外の指の二つに分かれている手なのだから手差すとか腕差すというべきか。 キュルケ、それと陽介もクマの示す方向を見る。 「ああ、なんか騒いでるな」 「面白そうね、見に行きましょ。行くわよ」 その声に応じてクマはイスからピョンと飛び降り、食事を十分とったであろうタバサ、陽介もキュルケの野次馬に付き合うことにする。 ルイズは構わず食事を始めようとしていたのだが 「ほら、ルイズも行くわよ」 キュルケはぐいと腕を引っ張りルイズを立たせて来る。 「ちょっとあんたらだけで行きなさいよ!私はまだ食事も……」 「ご飯なんて後で食べられるじゃない!さ、クマも手伝って!」 クマに反対の腕を取られ、ルイズは騒ぎの方向へと連れて行かれる。 ルイズは清掃で疲れていたので、抵抗をやめぐったりとしながらキュルケたちになされるがまま歩いていく。とにかく早く終わって食事をとりたい。 5人の中で一番早く歩いていた陽介が人だかりを見つけた。どうやらその人だかりの中に騒ぎの原因があるようだ。陽介は近づいて、中を見て声を上げた。 「げっ!完二が誰かつるし上げてっぞ!」 「何ですって!?」 ルイズは覇気なく両脇から抱えられていた様子から一変して、キュルケとクマの腕を払い人だかりへ駆け寄る。朝から彼女の頭を悩ませていた使い魔の名をこんなところで聞こうとは。 キュルケ、クマ、タバサも続く。 ルイズも陽介と同じ光景を見て驚きの声を上げる。完二が魔法使いの首根っこをつかみ持ち上げているように見える。よく見るとつかんでいたのは首ではシャツであったが。 「何やってるのよ、あのバカは!」 「ぶら下がってるのはギーシュみたいね」 金髪、それに手に持ったバラの杖を持った杖からもそれは明らかだった。キザったらしくうっとおしいヤツだが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった 。バラの造花なんて妙な杖を使っているのはギーシュ以外に見たことがないが、彼のセンスも問題ではなく彼がすでに杖を取り出していることが問題だ。 「とにかく止めないとカンジが危ないわ!」 陽介が不思議そうな顔をする。 「完二が?あの金髪のほうじゃなくて?」 「あんたたちは本当に貴族の……魔法使いの怖さがわかってないのね!ギーシュが本気を出す前に……」 ルイズの言葉が言い切られる前にワルキューレが現れた。窮地に追いやられたギーシュが、目の前の無礼で危険な平民を排除するために呼び出した彼の兵である。 土のメイジが得意とする錬金で作り出した青銅のゴーレムだ。それは大人ほどの背丈もあり、決してその攻撃は平民に耐えられるものではない。たとえ人並み以上に体の大きな完二でも。 ワルキューレは青銅の拳を完二へと振りかぶった。 「危ない!!カンジ!!!!」 ルイズは叫んだ。 完二は向かい来る敵意を横目にしながら危険を感じなかった。いや、彼はその自分に向けられた暴力を敵意とすら見なさなかった。 金色のカードが彼の目の前に現れる。それを、ギーシュを掴み上げている左手とは逆の、自由な右手で叩き割る。 「砕け!!ロクテンマオウ!!」 彼の背後に巨体が現れた。 それは真っ赤な体にオレンジがカラーリングされた金属のような体を持つ。上半身が異様に大きく、燃え盛る炎の色をしたボディとあいまって力強さを見せる。 そしてその手にある得物を青銅のゴーレムに叩き付けた。 キルラッシュ――その破壊の打撃がワルキューレに一度、二度と叩き込まれる。 攻撃を終えたロクテンマオウが姿が消すと残ったものはワルキューレの姿の名残すらない金属の塊であった。 ギーシュは目の前に現れた巨大な力も、自分のワルキューレが破壊されたことも信じられないのか、呆然としている。 周りを取り囲んだいた魔法使いの生徒たちも、自分の使い魔が叩きのめされるのを想像した彼の主も、そして彼と同種の力を有する陽介とクマも呆然としていた。 しかし回りのことなど構わず完二はギーシュを怒鳴りつける 「おい、俺は人のことを影であーだこーだ言うやつが嫌いなんだよ!ルイズの陰口をもう二度というんじゃねえぞ!」 呆然としていたギーシュは現状を思い出しコクコクと頷いた。 「つーか、あとでシエスタにもわび入れとけ!わかったな?」 ギーシュは更に早く首を上下に動かした。 ちっ、と言いながら完二はギーシュを話す。ギーシュは無様にケツから落ち、首元を押さえゴホゴホと咳き込んでいた。 「カンジさん……」 その衝撃が流れていた状況下で最初に声をかけたのはシエスタだった。 「よう、大丈夫か……」 「ちょっとカンジ!なんなのアレは!?」 完二が言い切るか、言い切らないかというところにルイズが割り込んできた。 今朝に喧嘩別れした自称完二のご主人さまに、完二はいきなりどう対応したいいかわからず頭をかいた。 「あー……なんだルイズじゃねえか、どうした?」 「どうした?はこっちのセリフよ!?あれは何?魔法使いなの?ゴーレムなの?今まで隠してたの?」 何を言ったらいいかわからない完二に対し、ルイズは言いたいことが多くあるようだ。バケツの水をひっくり返すように質問が飛んでくる。 「んなまくし立てられてもワケわかんねえよ!」 質問の乱発に完二の情報処理能力はすぐに容量がいっぱいになってしまう。 ルイズが更に言葉を並べようとするところへ陽介が割って入る。 「ちょい待ち。ここは人が多すぎる。移動しようぜ」 タバサ、キュルケ、クマが賛成の色を示し、しぶしぶながらルイズも従う。完二も当然彼らと一緒に行く。 再びタバサの部屋に6人が揃った。 「それにしてもまさかペルソナ能力が使えるとはなあ……。よく気付いたな、完二」 「いや、気付いたっつうか、ムカついてて実を言うとペルソナ出したことに気付いたのもついさっきなんスよ」 完二はなんとも間の抜けた答えをす。 「なんだよ、そりゃ……ってぶっちゃけそんな気はしてたけどな」 「完二は考えるより行動派だからクマね」 「おいクマ、テメエ、バカにしてんじゃねえだろうなあ……」 少なくとも行動力の高さを褒めているのではないことを感じ取り、完二はドスの利いた声を出した。 だが完二の迫力ある低い声も、もっと大きな声で消されてしまった。 「ちょっとあんたたち私たち無視してんじゃないわよ!」 どうやらルイズに使い魔たちが主たち抜きで盛り上がっている様子は、沸点を上回るには十分すぎたようだ。 完二はルイズという少女の沸点は高くはないだろうと思っていたので驚く事実でもないが、クマと陽介はひどく驚いたようだ。 「ごめんクマー」 クマはルイズの噴火に脅えキュルケの陰に隠れる。 「ちょ、違うんだよ、情報整理だよ。俺たちも混乱してて……」 「ならささっと説明しなさい!」 ルイズの噛み付くような態度に陽介もおののいて(クマのように主の影に隠れたりはしなかったが)、大人しく説明を始めた。 完二、陽介、クマの三人は世界にはテレビという映像を見る機械があること。 彼らがテレビに入る力を得たこと。 彼らテレビの中でペルソナという力を使えるということ。 ペルソナは外敵に対するための心の仮面だということ。 完二のペルソナは名をロクテンマオウ。赤い金属のような体を持ち、雷属性の力を使いその物理的な力は随一であること。 陽介のペルソナはスサノオ。疾風属性の力を持つこと。 クマのペルソナはカムイ。氷雪属性と回復の力を持つこと。 などを説明した。 説明で一番困ったのはテレビの説明であった。この魔法の世界で、科学技術の結晶の説明をすることは一苦労なうえ、 それを理解されるとテレビの中に入るとは映像の中に入ることとは違うということを説明しないとならなかったからだ。 それらの最難関をなんとかこの世界の少女たちに説明し終え、質問はこの世界にも存在する魔法のことに及ぶ。 「雷属性と疾風属性?雷は風の系統の中にあるんじゃないの?」 キュルケが質問してくる。どうやらあちらとこの世界では魔法のことさえ勝手が異なるようだ。 「いや、雷は雷だろ。俺たちの世界のテレビの中じゃ……ってややこしいな。とりあえず別の属性だった。 ペルソナの力は雷、疾風、氷、炎の4つが基本だな。つっても物理攻撃と闇・光、あとどれにも属さないメギドみたいなものもあったけど」 「分類の仕方が違うのね……」 今まで黙っていたタバサが質問する。 「あなたたちはどれくらい強い?」 ルイズとキュルケもじっと三人を見た。実のところ、それはキュルケとルイズも強く知りたがっていたことかもしれない。 「けっこう強いと思うけどここだと何処まで通用するかな……」 陽介は答えを濁した。あの世界でも相性によっては敵の強さが何倍にもなることはままあった。ならばこの世界ではどうなったものかわからない。 「カンジ、あのゴーレムはどうだったクマか?強かったクマか?弱かったクマか?」 完二はさきほど叩き潰したワルキューレを思い出した。先ほどは武器もなく、また頭に来ていたのでロクテンマオウで破壊した。しかし…… 「ザコだよ、あんなもん。キルラッシュ使ったけどよ、武器さえありゃ殴っても簡単にぶっ壊せたぜ」 完二の言葉に少なからずルイズ、キュルケ、タバサの三人は少なからず衝撃を受けたようだった。 話を切り上げることを提案したのはルイズだった。 キュルケはまだまだ聞きたいことはあるし、午後の授業までは時間はあると反対したが、 ルイズはまだ食事を済ませていないと言ってこれ以上は食事の時間もなくなると言った。こうして6人の話は終わりおのおの部屋から出て行った。 「カンジ、ついてきなさい」 完二はしぶしぶと気乗りしない様子でついて行く。 先ほどのケンカ騒ぎで忘れかけていたが二人は朝食時の時にケンカ別れしたのであった。 二人になったとたんそのことが二人にとって強く思い出され、喋りづらい雰囲気になる。 その雰囲気を先に壊したのはルイズだった。 「カンジ、あんたも一緒に食事にしなさい」 「ああ?」 ルイズの顔は真っ赤であった。朝の仕打ちを思いその前言を撤回すること、 そして手ひどく扱ってきた使い魔を認めるのはルイズのとって大きな勇気のいることであった。 「あんた私のためにギーシュに怒ってたんでしょ?」 彼女は完二がギーシュのワルキューレを倒したあと、ギーシュに言い放った言葉を思い出した。 ルイズの陰口をもう二度というんじゃねえぞ!と、彼は確かに言った。 彼女は魔法学院に入ってから一人で戦い、耐え忍んできたと思っている。 誰も彼女をかばってなどしてはくれなかった。だが完二は衆人環視の中で言い放ったのだ。 それがルイズにとっては――絶対に認めたくないが――嬉しかったのだ。 「今からは食事を一緒の席でとることを特別に許可してあげるわ。寛大なご主人様に感謝しなさい。 もちろん怒ってくれたのが嬉しいってわけじゃないからね! ただあんたがそこそこ力を持ってるならそれに見合うだけのご褒美を与えるのは主人の役目っていうか……」 ルイズは顔の赤みを増やしながら途中からろれつも怪しくなる。 「いや、昼飯ならもう食ったぜ、厨房で」 完二はあっさりと気の利かない一言を言った。 ルイズの顔から一気に朱が引く。 「つか、朝飯もそこでもらったんだけどな。マルトーのおっさんは気のいい奴だしよ……。ってどうしたんだその顔」 完二はやっとルイズの顔に不機嫌の表情が貼り付けられていたことに気付いたようだった。 「なんでもないわよ!」 「なんでもないなら怒鳴んなよ……」 「あんたはこれからずっと使用人たちと一緒にご飯食ってなさい!」 ルイズはご主人さまの気遣いも理解できない使い魔に一瞬でも貴族の食事を許そうとした自分に腹を立てると同時に、 食事を共にするなどこれからも許さないと胸に固く誓う。 完二はもとよりそのつもりであったのかそう言われて特にどうも思ってないように見える。しかしやはりルイズの不機嫌の理由がよくわからないようだ。 「ナニ怒ってんだよ?」 「怒ってない!」 気の利かない使い魔からルイズはぷいっと顔を背ける。 「怒ってるじゃねえか、ったく、これだから女ってのは……」 はあ、と完二はタメ息をこぼした。 ルイズはご機嫌ななめで、完二は文句をこぼす。 それでも二人は並んで歩く。 前ページ次ページゼロのペルソナ
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「…何も問題はありません。健康そのものです」 「本当か?本当なのか!?」 カトレアを診断した主治医に、ヴァリエール公が詰め寄る。 「はい…薬を使った形跡すら感じられません」 力なく首を振る主治医の姿に、がっくりと肩を落とす公爵。 「あらあら、心配しなくても私はほら、こんな事も出来るようになりましたわ!」 グオン 「「座ったままの姿勢でジャンプを!?」」 育郎の治療を受けてすぐに、カトレアはルイズが止めるのも聞かずに、 その健康体がどれ程のものかを試しだした。 「ブラボー!おお、ブラボー!」と叫びながら突如浮き上がったり、 「かけよトロンベ!」と叫びながら自分の愛馬で屋敷中を走り回ったり、 その他諸々、その様はミス・アンチェインとでも呼びたくなるほどだった。 「何故…こうなってしまったのだ?」 「病が裏返ったとしか…」 「…なんだそれは?」 「今まで掛かっていた負荷がなくなり、急激に身体が活性化したのと合わさって」 「まあ…何はともあれ、カトレアの身体は治ったのです。 この際些細な事は気にしないでおきましょう」 溜息をつきつつ、二人の背後にいたヴァリエール公爵夫人がつげる。 「些細な事…か?」 ヴァリエール公の呟きを無視して、夫人はカトレアに向き直る。 「カトレア、貴方も元気になって嬉しいのはわかりますが、貴族たる者が そのようにはしゃぐなど…みっともないとは思わないのですか?」 カトレアは手を口に当て、あらあらと言いながら頭を下げる。 「ごめんなさいお母様。身体があんまりにも軽くなったものですから、 心まで軽くなったみたいで。不思議ですわね」 そう言ってケラケラと笑うカトレアに、つい再び溜息がでてしまう。 「あ…あの、お父様、ちいねえさまは?」 声のほうを見ると、部屋の外で待っているよう言われたルイズが、カトレアが 心配だったのだろう、堪えきれずに部屋に入ってきていた。 「こら、ルイズ!待ってなさいと言われたでしょう」 同じように廊下で待っていたエレオノールが、ルイズを連れ出そうとするが、 それをヴァリエール公が制する。 「かまわん、エレオノール。ルイズ、心配しなくとも異常は見当たらんそうだ」 「あれで…ですか?」 エレオノールが見ている方に視線を向けると、カトレアが部屋に追いてあった ワインをグラスに注いでいた。ただコルクぬきが見つからなかったのか、ビンの 底に指を刺して穴を開け、そこから注いでいる。 「カトレア!」 その時公爵夫人の凛とした声が部屋に響き、部屋にいる全員の身が硬くなった。 「…なんでしょう?」 部屋の中にいる人間全員が、緊張した面持ちでカトレアと公爵夫人を見る。 「…行儀が悪いですよ」 「それもそうですね」 「あー…なんだ、よくぞ我が娘カトレアを…その…治療してくれた。感謝する」 口ごもりながらも、ヴァリエール公が育郎に感謝の言葉をかける。 「は、はぁ…」 対する育郎は、どこかすまなさそうな顔をしている。 「ほら、もっと堂々としてなさいよ。治ったんだからいいんじゃない。 ルイズも、ほら。だいたいこういう事言うのは、貴女の役割でしょ?」 キュルケが育郎と、いろいろと疲れた表情をするルイズに声をかける。 「どう見ても病気には見えない」 「うん…まあ、そうなんだけどね」 タバサの言葉に頷くが、やはりどこか釈然としない表情をするルイズ。 「ああ、俺様も長い事生きてるけど、あれほどの「アンタは黙ってなさい!」 …わーったよ」 「その…ごめん」 「い、いいのよイクロー。あんたが謝らなくても」 「何をコソコソと話しているのかな!?」 「い、いえ。なんでもありませんわお父さま!」 焦る娘の様子に今日16度目になる溜息をつき、とにかく今回の事はこれで 良しとしよう。そう自分を無理やり納得させる。 「ルイズ、とにかく今日は友人といっしょにゆっくりとしていきなさい。 久しぶりに家族がそろったのだ。カトレア達も積もる話もある事だろう」 「えっとお父様…今日は日帰りのつもりだったので、休みの届けをだしては」 ルイズの言葉に笑いながら答える公爵。 「なに、一日授業を休むぐらいどうという事は…」 背後からの凄まじいプレッシャーに、言葉が止まるヴァリエール公。 「あなた…」 そのプレッシャーの発生源。己の妻の声に、ヴァリエール公の背筋が凍る。 「あるな!うむ!やはり無断で授業を休むなど言語道断!」 「あら…久しぶりにルイズと一緒に寝ようかと思ってましたのに」 娘の不満げな声に、溜息をつきながら公爵夫人が口を開く。 「…夕食ぐらいはとって行きなさい。エレオノール、カトレア、食事の準備が 整うまでルイズと一緒にいていやりなさい」 「わかりましたわ、お母様」 「は、はぁ…母様がそう言うなら。ほら、貴方達こっちにきなさい」 ルイズ達とともに、部屋を出ようとしたカトレアが、ふと何かに気付いた様子で ヴァリエール公の方に振り向く。 「そうですわ!」 「な、なんだカトレア?」 少し驚いた様子の公爵に、いつものような無邪気な笑顔でカトレアは告げた。 「お友達も学校があるからしかたないとして、あの使い魔さんだけでも 泊めていってはどうかしら?」 「は?」 「ルイズの話も聞きたいし、それに私を治してくれたお礼もしたいですし」 「お、お礼…ど、どういう意味だカトレア!?」 「そんなに凄かったの!?」 「ちょっと、なにやってんのよキュルケ!?」 突如現れたキュルケに続いて、ルイズと呆れた顔をしたエレオノールが 再び部屋に入ってくる。 「貴方達なにやってるのよ…お父様、どうかしたのですか?」 「あ、うむ。カトレアがそこの使い魔だけでも泊めてはどうかと言ってな。 まったくどういうつもりなのか…」 「へ?イクローを?なんで?」 「だって貴女が魔法学院でなにをしているか、使い魔さんに話を聞きたいし」 「凄かったのね…」 じゅるり 「キュルケ?」 再び溜息をついて、何か言ってやりなさいとエレオノールを見るヴァリエール公。 「……別に、かまわないでしょう」 「エレオノール、お前まで!?カリーヌ!」 最後の頼みと、妻に視線を向ける。 「カトレアを治したのは事実です。 平民とはいえ、それなりの待遇でもてなすべきでは?」 「わかった…ルイズ、お前もそれでいいかい?」 「あ、はい」 どうにも釈然としないといった表情のルイズだが、納得できないのは公爵自身 も同じである。カトレアはともかくとして、何故エレオノールまで? その時、公爵の頭にある考えが浮かんだ。 「まさか…いや、しかし…」 「どうかなされたのですか、あなた?」 「い、いや…なんでもない」
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どんな者だろうと人にはそれぞれその個性にあった適材適所がある ゼロにはゼロの・・・・・ ギーシュにはギーシュの・・・・・ それが生きるという事だ 使い魔も同様「強い」「弱い」の概念はない by○ィオ ここまでのあらすじ ギーシュが謎の平民を召喚したようです。 ルイズはサイトを召喚したようです。 「感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて普通は一生ないんだから」 ルイズはサイトに顔を近づける。 「我が名は(ry」 『な、ちょ、ちょっと………』 ドン! ルイズはサイトに思いっきり押し返されてしまい、キャッと悲鳴をあげ尻餅をつく。 「何するのよ!平民が貴族に………!」 ダメよ!ルイズ!怒ってはダメ!この平民も急なことで混乱しているのよ……! ルイズは自分に言い聞かせると、サイトににこりと笑みを向けた。 「心配しなくていいのよ」 笑顔を向けられたサイトも、いきなりルイズを突き放したことに少し罪悪感を覚える。 『あ、わ、わりい。そんなに強く押したつもりは……』 お互い言葉は分からないが、相手に敵意が無いことはなんとなく分かった。 今度こそキスをしようとルイズが近づくが…。 「きゃ!」 さっきこけた時に足を痛めていたのか、ルイズがバランスを崩す。 そのまま倒れたところにサイトがいたため、二人はそのまま頭をぶつけ合った。 二人とも頭を押さえているところで目が合う。 ルイズは冷静になって今の状況を見てみる。ルイズは馬乗りでサイトの股の上に座っていた。 思わず無言で今度はルイズがサイトを突き放した。 『何すんだよ!』 頭突きをされた上に、突き飛ばされたサイトは怒鳴り声を上げた。 「なななな、なによ!あんたが変な所触るから!」 『なんだよ!悪いのはお前だろ!』 にらみ合う二人を見かねて、コルベールが割ってはいる。 「君たちこの神聖な儀式で何をやっているのですか!?」 二人は声のする方を向き同時に叫んだ。 「『うるさい禿!』」 「あああああああん!?誰の頭が波兵だって!?」 コルベールの目つきが急に変わる。 「まったく!ヴァリエールったら!またおちょくるネタができたわ!あなたもそう思うでしょ?」 ルイズとサイトのコントを見ていたキュルケが笑いながら、タバサに尋ねた。 「興味ない」 タバサはそれだけ言うと、再び本の世界に没頭し始める。 「何よ~つれないわね~。それにしても平民が2人も召喚されるなんて前代未聞よね!」 そう言ってギーシュの方を向く。 「あまりからかわないでくれ……」 いつもの明るさも無くギーシュはうめいた。さっきギーシュはルイズより先に平民を召喚したばかりだ。 しかも男。ギーシュは泣きながらこのグッチョと名乗る男とキスを交わしたのだ……。 「ほんと、さっきのあなたの顔『傑作』だったわ。タバサもそう思うでしょ?」 キュルケは再びタバサの方を向き同意を求める。 「…………」 完全無視。いつもならどうも思わないのだが、なぜかこの時はカチンときたキュルケは、タバサの本を奪って地面に叩き付けた。 数秒の沈黙の後、タバサがキュルケを見上げる。 「拾って」 「話しかけてんだから、反応しなさいよ」 いきなり一触即発という重苦しい雰囲気が生まれる。横にいたギーシュは慌てて二人をなだめようとする。 「君たち?急にどうしたんだい」 なるべく明るく話しかけるが……キュルケとタバサが急にそれぞれ後ろに跳んだ。そして彼女たちの手には杖が握られている。 「ちょちょちょ!ななにやってんだよ!二人とも!コルベール先生!」 慌てたギーシュが先生の名前を呼ぶ。 が、ギーシュがコルベールを見たとき彼はちょうど爆発で吹き飛んでいるところだった。 その魔法の主は言わずもがな……ギーシュは今度はルイズの名前を叫ぼうとした。何やっているんだと。叫ぼうとする。 しかしそれを言う前にルイズは、ルイズが呼び出した平民の使い魔に顔面を殴られ吹っ飛んだ。 「…………ッ!!!」 ルイズが鼻血を噴出しながら、後ろに倒れそうになる。そこをチャンスとサイトの追撃の蹴りがルイズのみぞおちを突き刺す。 本来なら地獄の苦しみを味わうところだろう。しかしルイズは血まみれの顔で笑っていた。 サイトが驚愕の顔でルイズを見る。サイトの蹴りはルイズのみぞおちをえぐる前に、ルイズの両手で掴まれていたのだ。 ルイズは笑いながらサイトの足を捻る。 グッっとうめき声を上げたサイトだったが、もう片方の足で大地を蹴り上げ、ルイズの捻りに合わせるように体を回す。 そしてその蹴りはルイズのアゴをこすった。三度吹っ飛ぶルイズとサイト。 ルイズは鼻血をマントで拭うと、それを外して後ろに投げた。さらに杖を構えてサイトを睨みつける。 サイトは妙な方向に曲がった片足を見た後、関係ないというように立ち上がりルイズを睨みつける。 二人は暫く睨みあった後笑顔で呟いた。 「私よ!」 「『最強は』」 『俺だ!』 THE ENDおおおおおおおお!よっしゃああああああああ! マリコルヌは地獄絵図と化した広場で、どうすることもできずにいた。 なにが起きているんだ!? 後ろでは生徒と生徒が、右では使い魔と使い魔が、左では生徒が自分の呼び出した使い魔と死闘を演じている。 超巨大なツララが宙を舞い、それに向かってこれまた超巨大な炎の球が飛んでいく。 「オラオラオラオラ!」「無駄無駄無駄無駄無駄!」 前方の広場の真ん中ではルイズの爆発と、それを縫うようにして避ける平民が壮絶な争いを繰り広げていた。 よく見ると、平民の左手のルーンが光って……いやあれはルーンじゃない!体の至るところが光っている! しかもさらに回りを見回すと、それはその平民だけではなかった。 生徒だけでなく使い魔までもが、体の至るところが光っていたり、ドス黒くなっていたりしている…。 ドォン!! 大きな爆発音にマリコルヌはサッとに頭を守る。そしてそのとっさの行動は正解だったようだ。 親方!空から女の子が! マルコルヌに向かって落ちてきたタバサは、彼に当たって地面に落ちた後、一回跳ねた。 マルコルヌは痛む腕を押さえて恐る恐る見てみる。タバサは仰向けに倒れたままピクリとも動かない。 杖は握ったままだが、その腕からは血が流れている……。 思わず後ずさる。すると足元からピキッと何かガラスが割れるような音がする。 うわ!っと叫び声をあげ見てみると、メガネを思いっきり踏んでいた。 手にとってみると、右のレンズが地面にポロっと落ちた。形も妙にひしゃげている。 「返して」 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!??」 慌てて声のする方を見るをさっきまで倒れていたはずのタバサがすぐ近くまで寄って来ていた。 「あああ」 足の力が抜け思わずその場にへたれこむ。 タバサは腕やひざから血を流し、肩で息をしていた。右目を閉じたまま開こうとしないし、髪が少し焦げているようだ。 服も所々焼け焦げていて、そんな箇所からタバサの肌が見えていたが、まっ黒くなっていた。 ただ顔色だけは血色がよく、少し火照った顔をしていた。 「返して」 再びタバサが言う。マルコルヌは慌てて意識を元に戻すとメガネをタバサに差し出す。 タバサはそれを掛けるが、自分の顔にすでに合わないことを知るとそれを投げ捨てた。 そしてマルコルヌを睨む……いや、彼の後ろにいる存在………キュルケを キュルケも同じように、いやそれ以上に満身創痍という感じだった。 こちらは体中が切り傷だらけ。もともと大胆に切り開かれた胸元はさらに、裂けて今にも見えそうだった。 しかしキュルケはそんなことお構い無しという風な様子だ。 「あら?チャームポイントが壊れちゃったのね?」 キュルケが笑う。 「必要ない。見える」 タバサも笑う。 …………二人が呪文を唱えるより速く、マルコルヌは駆け出していた。 今までの人生でこれほど速く動いたことは無かっただろう…………さすが風上。 その時。 「それ以上近づくな!」 急に声を掛けられストップする……が勢いあまってこけて顔面から地面にダイブしてしまう。 鼻血を押さえながら見上げると、そこにはギーシュとそれに隠れるようにしているモンモランシー。 その顔にはいつものおちゃらけた様子は全く無い。 ギーシュ・ド・グラモンお前もか!思わずそんな言葉とともに今までの人生が走馬灯のように駆け巡る。 マルコヌル…お前はりっぱにやったのだよ……そう……自分で誇りに思うくらいね…… フフフフフフウフフフフマリコルヌフフフフフフマリコルヌ!マリコルヌ!! 「マリコルヌ!しっかりしたまえ!僕は君を襲ったりしない!」 そこでマリコルヌはやっと、ギーシュが自分に呼びかけていることに気づいた。 「ギギギギギギーシュ!君はまともなんだね!!!」 マリコルヌが思わずギーシュを抱きしめる。 「みんながおかしいんだよ!!!どうすれば!!??」 「落ち着くんだ!ホラ素数を数えるんだ!」 仲良く素数を数え始めた二人を見て、モンモランシーが緊張した面持ちで声を掛ける。 「そんなことしている場合じゃないでしょ!ここは危険よ。原因は分からないけど早くオールド・オスマンに知らせないと!」 「モンモランシー!男同士の友情に水を差さないでくれたまえ!」 ギーシュが非難の声を上げる。正直マリコルヌはモンモランシーの言うとおりここからさっさと離れたかったのだが ギーシュが自分の味方をしてくれるのも悪い気はしなかった。 「何よ!私より『かぜっぴき』のほうが大切だっていうの!?」 「『かぜっぴき』じゃない!『風上』だよ!」 モンモランシーの発言に慌てて突っ込みを入れる。 「モンモランシー今のは失礼だよ。彼だって彼なりにがんばってんだ!ねぇ『マゾッピキ』!?」 「……………………!!!!『風上』だ!二度と間違えるな!僕の二つ名は『風上』というんだ!『かぜっぴき』でも『マゾッピキ』でもない!!」 マリコルヌはギーシュの胸倉を掴んだ。 「…………この手はなんだよ」 ギーシュの声は今までに無いほど冷たかった。 「その手を離しなさい」 モンモランシーがマリコルヌに杖を向ける。 「モンモランシーさぁ……ギーシュをすっごく、すっごく信頼しているみたいだけどね……知ってるのかなぁ?二股のこと」 それを言った瞬間、ギーシュとモンモランシーに衝撃が走る。 「な!」 「なんですって?…………どういうことギーシュ………まさか………」 「ち、違う!デタラメだ!」 「名前は何ていったかな~。たしか3年生の~」 「デタラメを言うな!3年生の女性とは付き合ったことなどない!」 「じゃあ1年生かな?」 「そうだ!…………はっ!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド モンモランシーの怒りのオーラで背景がゆがんで見える。 「なるほど………マヌケは見つかったようね…………」 その怒りは全てギーシュに向けられているはずだが、マリコルヌは自身そのプレッシャーに体が震えるのを感じる。 そしてギーシュはもはや弁解する余地なしと悟ると、マリコルヌを睨みつける。 いつものマリコルヌならすでに恐ろしさのあまり縮み上がっているだろう……だが今は違う! 心の奥底から勇気が!闘志が湧いてくる!さっきまで自分は何に恐れていたのか! マリコルヌは思う。 (ギーシュ!モンモランシー!もう二度と!『風上』以外で呼ばせない!僕の名前を貴様らのそのクサレ脳みそに刻ませてやる!) ギーシュは思う。 (『マゾッピキ』め…!コイツさえいなければ!僕の『平穏』は保たれていたのに! モンモランシーもモンモランシーだ!別にケティとはまだなにもやってないってのに!) モンモランシーは思う。 (ギーシュ、おお私のギーシュ。二股なんて……でも安心して私がついているわ……これから私があなたを『教育』してあげる。 まずは友人関係からね…………バカな『かぜっぴき』にコケにされるなんて我慢なら無いでしょう?私は絶対我慢ならない!!) 「僕だ!」 「『こいつを裁くのは』」 「僕さ!」 「私よ!」 またまたTHE ENDおおおおおおおお!よっしゃああああああああ!
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前ページ次ページゼロのロリカード アンリエッタの到着に、痺れを切らせた敵がコンタクトを取ってきたところで作戦スタート。 十中八九人質に危害を加える旨を言ってくるだろうから、無手のアーカードが身代わりとして敵陣へと赴く。 敵首魁にエロ光線で以て魅了をかけ、とりあえず撤退の指示を出させる。万が一それで終われば無事解決。 と言っても素直に従う可能性はまずない。他の連中の反抗の意思が見えたところで、首魁に人質の縄をはずさせる。 同時に機を窺っていたタバサが、準備しておいた紙風船スタングレネードを風で食堂まで送る。 アーカードが浮遊してきた紙風船に注目するよう仕向け、敵の視線が集中したところでキュルケが紙風船を発火させ爆発。 然る後、一斉に突入を敢行する。 人質の救出を最優先事項とし、爆発で壁を破壊できるルイズと、デルフリンガーで魔法を吸収できるアーカードがその役を担う。 予め人質がいる付近の壁向こうに待機したルイズは、紙風船の爆発と同時に壁を爆破し援護の4人の銃士隊と共に突入。 デルフリンガーをアーカードに投げ渡した後、可及的速やかに周囲の敵を排除して、すぐに人質を誘導し食堂から退避させる。 アニエス以下残った銃士隊はそれぞれ窓から突入し、敵が人質側に注意がいかないよう近くの敵と交戦、これを撃滅。 キュルケ、タバサ、コルベールのメイジ組は正面から突入し、銃士隊を援護しつつ転戦。 「最終確認は以上だ。・・・・・・アニエス」 アーカードはこの場の責任者であるアニエスを見た。 「それでは各自準備を。私は隊員達に説明してくる」 そう言ってアニエスは立ち上がり、隊員達を召集し始めた。 キュルケとタバサは、コルベールと共に研究室へ紙風船の準備と錬金をしに行く。 「成功・・・・・・するの?」 「させなくちゃならんだろう喃」 アーカードはデルフリンガーをルイズに手渡す。 「大事に扱ってくれよ」 デルフリンガーはそう言ってルイズに背負われる。 「重いわね」 アーカードは片手で楽々と扱ってはいるが、やはり大剣だけあって重い。 「自分で持てないの?」 アーカードは自身の中に色々としまっておける。 自分の剣も収納してあるし、デルフリンガーも例外ではないはずだ。 「一度だけ入れた事があるのだが・・・・・・」 「なんか気持ち悪いんだもん」 デルフリンガーは答える。アーカードは「やれやれ」と言った風に言う。 「と、言うわけだ。意思を持つ武器は、文句垂れて不便なことだ」 「気持ち・・・・・・悪いんだ・・?」 ルイズが恐る恐る聞く。 「あ~・・・、言葉にできない気持ち悪さだった。あれじゃ眠ることもできやしねェ」 「私の中には無数の命がいるからの。思考などは拘束しているが、歴として存在している」 そう言うとアーカードはその場に座り込む。ルイズも立っていては疲れるので座ることにした。 「とりあえず、納得したわ」 「銃が使えれば楽なんだがの。カスール銃であれば敵を完全に貫くから跳弾の危険はなく、精密射撃も容易。 一瞬で人質側の6人を殺し、ただ一度のリロードで残りの6人も殲滅して終了。 しかし生憎と弾切れ。一応トミーガンもあるが、あれは短機関銃。弾幕を張って点じゃなく面で攻撃するものだ。 射程も短く精密射撃には向かん。跳弾の危険もあるしの。現状じゃ地道にいくしかない。 尤もこの作戦ならば、よっぽどのイレギュラーが無い限りは、スムーズに終わると私は踏んでいる。 まっこれもいい機会だ、来るべき戦に備えて慣れておくがいい。経験は積んでおいて損はないからの」 アーカードはそう言うも、ルイズは一抹の不安を拭い切れなかった。 根拠はないけれど・・・・・・何かが起きそうな、そんな予感。言い知れぬ不安。 目前に迫る緊張の所為で、神経過敏になっているだけかもしれない。ただの杞憂かもしれない。 アーカードはふんぞり返って空を眺めている。浮かぶ双月を見つめているようだった。 相変わらず超然としていて、非常にマイペースだ。こういう図太さも見習わないといけないかもしれない。 (うん、一人一人が・・・・・・きちんとやるべき事を為せば作戦は成功する。何を恐れることがあるのルイズ) ルイズは深呼吸をして自分のするべき事を反芻し、ゆっくりと心を落ち着け拳を握り締めた。 † アーカードは首魁の男の目を見て気付いた。 (むっ・・・こやつ、まさか盲目か?) 他のどの感覚器官で代替しているのかは知らないが、目と目を合わせないとエロ光線は通じない。 (初っ端からイレギュラーとは、幸先が悪い) 仕方なしに、アーカードは視線をずらす。狙いは近くにいるもう一人の男。 一瞬だけ目を見開き魅了をかける。男は正気を失い、空ろな瞳で人質の方に歩いていった。 「ジェルマン?」 首魁の男の言葉を無視し、ジェルマンと呼ばれた男は歩を進める。 アーカードは手は動かさず、指だけで合図を出す。窓から目を凝らしていたアニエスが、さらにタバサへと合図を送った。 (代替器官は、耳の可能性が高いか。視力がなくても、音で耳を麻痺させることはができるだろうが・・・・・・) 視力のない者が聴力に優れているというのは、ある種のテンプレート、お約束である。 さらに言えば、視力の代わりとなれるのも実際には耳くらいなもの。 先天的にせよ後天的にせよ、傭兵をやってるからには、聴力が異常に発達していると考えられる。 (・・・・・・念には念を。人質の所まで行く前に、一撃入れておいた方がいいか) サクッと蹴り殺して人質周りの敵を殲滅するくらいなら、大したタイムロスにもならない。 † 「おいッ!!」 涎を垂らして歩いていくジェルマンに向かって、メンヌヴィルが一際大きく叫んだ。 激情の籠もったその声も、もはやジェルマンの耳には入らない。 リーダーである自分の言葉を無視することに、メンヌヴィルの顔が怒りと疑念で大きく歪んだ。 人質達とある程度の距離まで近づいたところで、ジェルマンは杖を掲げた。 「あれはなんだーーーーーっ!!」 アーカードは飛んできた紙風船の方へと指を差し、やや棒読み気味で叫んだ。 ◇ 「・・・・・・なんだ?貴様」 突然正面の扉から入ってきた人物に、メンヌヴィルは問うた。 「あの・・・・・・貴族の方々を殺すのであれば、私が身代わりになります」 両手を頭より高く上げ、敵意が無いことを示し、死の恐怖を飲み込み、ひた隠して耐える少女。 それ以外には見えない。誰がどう見てもただの少女だ。おそらくはただの平民。 それでもメンヌヴィルは、何故か引っ掛かかりを感じた。 (体温が・・・・・・低いな) 今まで多種多様な人間を焼いてきたが、ここまで体温が低いのも珍しい。 殺される人間は総じて動悸が激しくなる。興奮して若干体温が上がるのが普通だ。 血の気が引く者もいるが、それにしても少女は、寒空の下で一晩過ごしたのかというほど体温が低い。 だがさほど気にするほどでもない。少女一人に何ができる筈もない。 無様に喚く人間を焼くのも楽しいが、覚悟して死のうとしている人間を焼くのも代え難いものである。 最初から死に恐怖し、命乞いをする者の反応は皆、似たり寄ったり。 しかし一見して覚悟をしている風を見せる者は、炎に包まれた時のリアクションが様々だ。 焼いた瞬間に一転して泣き、叫び、転げまわる者。 それでもひたすら耐え抜く者。 一矢報いようと飛び掛かる者。本当に様々だ。 「殊勝だな、その心がけに応えてやる。貴様をかわりに焼いてやろう」 ジェルマンの詠唱と――――、他の敵が紙風船を注視するのと――――、そして敵首魁メンヌヴィルが詠唱を始めるのは――――同時。 次に、紙風船が爆発するのと――――、メンヌヴィルが炎を放つのと――――、ジェルマンが魔法を使う瞬間に燃やされたのが――――同時であった。 大きな光と音が瞬時に広がり、衝撃と煙が瞬く間に食堂全体を包み込む。 (う~ん・・・・・・眩しい) 刹那の閃光はまさに、燦燦と照りつける太陽のようであった。しかしアーカードにとっては大したことでもない。 耳をつんざく爆発音も、濛々と立ち込める煙もアーカードの障害になることはない。 重力に囚われないかのような軽い跳躍。そのままアーカードは、メンヌヴィルに蹴りを叩き込む。 小気味よい音と共に頭が吹き飛び、残された体から赤い噴水のように血が吹き出る――――――。 ――――――筈であった。 「むっ・・・!?」 気付けば自分の体が炎に包まれていた。 鋼鉄すら溶かし尽くす、高温の白炎がアーカードを焼いていた。 大きな光、そして音。それらを受けた人間の取る行動は一つしかない。 身体を丸める。反射的に、身を守る為に、老若男女これ本能である。 しかしメンヌヴィルは立っていた。 閃光と爆音に動じず、何事もなく魔法を詠唱し、煙もものともせずアーカードの不意討ちに対処した。 アーカードは心の中で毒づく。次に取った行動は"無視"。 身を翻して炎を吹き飛ばし、崩れかかった足で一気に床を蹴り込んだ。 主ルイズからの命令は人質の救出。それを最優先することだ。距離があいて既に後方にいる男は実力者。 烈風カリンほどではないにせよ、ワルドくらいには強そうだ。 手早く拘束制御術式を開放して殺すにせよ、やはり幾許かの時間が掛かる。今はそんな時間すら惜しい。 跳躍と同時に体が急速に再生していく。向かう先から爆発音が聞こえ、次に窓を割る音が聞こえた。 ルイズ達が突入してきたのだろう。次いで放物線を描き、投げ込まれるデルフリンガーが見えた。 その落下点へと向かい、これを回転しながら掴み取りそのまま反転、追撃で飛んできた火球を吸収した。 (ん~む・・・・・・タバサ達は大丈夫だろうか) 敵首魁はさらに詠唱をして、次々に火球を放っていた。 その飛んで行く方向から察するに、いずれも味方の突入位置である。 (いずれにせよ・・・・・・援護は人質の安全を確保してからだな。是非とも闘いたいが・・・・・・今は私の領分ではない) 踵を返して、人質周囲の敵の殲滅行動へと入る。 体を丸め狼狽し、声を上げている敵を真横に切り捨てる。 次に人質を跨ぐように跳躍し、自分の剣を取り出し最も遠い敵へと投擲した。 敵は衝撃で壁までぶっ飛び、串刺しにされ絶命する。 最後にパカンッという音の直後にアーカードは着地し、顎が吹き飛んだ男がそのまま倒れた。 † アーカードの蹴りで、男の顎が吹き飛ぶ。 ルイズが敵と交戦しようとした瞬間、その標的が丁度目の前でアーカードに殺されたのであった。 アーカードはルイズを一瞥すると、一度だけ頷く。「他の敵は任せろ」ということだろう。 ルイズはすぐに詠唱し、人質達のロープをはずす。 虚無に目覚めてからというもの、コモンマジックならば問題なく扱えるようになっていた。 人質周囲の敵がいなくなったところで、銃士隊員がパニックに陥る人質達を宥める。 目を瞑っていて光の直視を免れた生徒達は、視力が回復した者から我先にと壁に空けられた穴から出て行く。 銃士隊に誘導され、動けない生徒は抱えられ運ばれて行く。と、そこでルイズは見知った顔を見つけた。 「モンモランシー?」 「ぅぅ・・・・・・ぇ・・ルイズ・・・?」 顔を上げたのはモンモランシーであった。薄っすらと目を開けてこちらを確かめるように見つめている。 「え・・・・・・なんで・・?」 「助けにきたのよ。ほら、さっさと立ちなさい」 手をさし伸ばすと、モンモランシーは恐る恐る手を取り立ち上がった。 いまいち状況が把握しきれず、キョロキョロしているモンモランシーの顔を向かせる。 「モンモランシー、あなたはすぐに杖を取ってきて。あとできれば、他に回復魔法が使える人も集めてきて」 「あ、うん。・・・・・・わかったわ」 突入した直後に、赤い軌跡がいくつか見えた。あの光と音をものともせず、炎球かなにかを放った者がいるとは信じ難い。 がしかし、次いで聞こえた破裂音と銃士隊員達の声。その何者かがいるのは、ほぼ間違いない。 嫌な予感が当たってしまった。銃士隊員の治療の為にも、水メイジはできるだけ欲しい。 (状況は予定とかなり違ってきてる。最優先事項である人質の救出が、今のとこ順調に進んでいるのだけが救いだけど・・・・・・) 最悪死亡者が出る可能性も有る。 (キュルケ・・・・・・、タバサ・・・・・・、アニエス・・・・・・) 他の皆の無事を祈り、ルイズはグッと唇を噛んだ。 前ページ次ページゼロのロリカード
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前ページ次ページゼロのチェリーな使い魔 結局、タバサの風竜が馬車を持つのをゴネた為、馬車は後で使いを出して引き取らせる ことにして森から飛び立ったルイズ一行。 大きな被害もなく帰路につけることに安堵し、風竜の背中の上で思い思いに休息を取っている。 「フーケを飲み込んだ液体、あれは間違いなく『クラウダ』…」 一見何の変哲もない平凡なデザインの『破壊の杖』を手に取り独り言を呟くフリオニール。 自身が最近まで愛用していた『まじゅつのつえ』より武器としての性能は一段上だろうと 感じ取った。すさまじい魔力が込められている。道具として使った際の威力はもちろん 『まじゅつのつえ』の『サンダー』(熟練度5レベル)を超えている。 フリオニールは『破壊の杖』を床に置くと思いついたようにデルフリンガーを抜く。 「おっ!やっと俺っちの出番だな」 「もう終わったよ」 「えっ!そりゃないぜ、相棒!」 「ごめん。今回は敵が強すぎた」 「だったらなおさらじゃねぇか!」 「まぁまぁ落ち着いて」 2人(?)のやり取りをじっと見ていたキュルケが意を決してフリオニールに近づき 「ダーリン、あなたが何者なのか説明して!」 真剣な表情で問い詰めた。 「う~ん、そうだな。キュルケとタバサは強敵を一緒にやっつけた戦友だ。隠し事はし」 フリオニールは己の素性を明かそうとしたが、ルイズが遮った。 「ダ、ダメよ!」 「戦友に隠し事はできないよ。言うよ、俺は」 「ち、ちょっと!」 「俺、異世界から来たんだ」 止めるルイズを無視して真実を告げるフリオニール。キュルケはそれを聞かされ鳩が豆鉄砲を 食らったような表情になった。 タバサは読書中だったがページを捲ろうとした手をピタッと止める。 「たまに異世界から人や物が召還されることがあるって院長が言ってた。この『破壊の杖』も たぶん俺の住む世界の物だと思う。けれど、まぁ、これは秘密ってことで」 フリオニールは人差し指を唇に当てた後、かいつまんで身の上話を始めた。 例によって魔法の本を買って覚えれば平民でも魔法を使えることに驚いた様子だ。 ハルケギニアでは魔法を使える=特権階級(落伍者は除く)なので、フリオニールの住む 世界は一体どのような政治形態をとっているのかキュルケは興味を引かれた。キュルケの 母国であるゲルマニアは金を出して領地を購入すれば平民でも貴族になれる制度である為、 フリオニールもきっとそのような環境で暮らしているのだろうと思った。 フリオニールから返ってきた答えは、王政ではあるものの貴族と平民の垣根はハルケギニアの それよりも低くおおらかな人が多い世界である、というものだった(パラメキア帝国と 一部の貴族を除く)。 「そうよね。みんな魔法を使えるんですもの。メイジの権威はないわね」 「そうでもないよ?ミンウはみんなから慕われてるし。それにミシディアっていう魔法国家も あるみたいだし」 「ダーリンはその魔法国家に行ったことないの?」 「そこに行く前に召還されたわけで…」 「そうか…でも、ハルケギニアに来て良かったでしょう?」 「魔法学院はいいところだね(可愛い娘多いし)。でも、俺はやらなきゃいけないことがあるんだ」 「やっぱり帰っちゃうの?」 「反乱軍は俺で保っているからなぁ、なんて冗談だけど」 フリオニールとキュルケは顔を見合わせて笑った。笑ったがキュルケの表情は寂しそうだ。 フリオニールは気まずくなった空気を何とかしようと話題を変えた。 「魔法は得意じゃないんだけど、この世界に来てから魔法の成功率が高くなったような気がする」 「ハルケギニアがメイジの治める世界だから何か影響しているのかしら?」 「そうかもしれない」 フリオニールとキュルケの会話を黙々と聞いていたタバサが突然、 「毒は治せる?」 「『バスナ』か『エスナ』の魔法であれば治せるけど、俺は使えないんだ」 「そう」 タバサにしては珍しくがっかりした表情を一瞬であったがみせたので、親友のキュルケが 不思議そうにタバサを見つめた。 「ご主人様」のルイズはひとりボーッとしている。キュルケの「やっぱり帰っちゃうの?」の 言葉を聞いて、フリオニールとのいつかやってくるであろう別れを想像すると心臓を 圧迫さそうな気分になった。 そんなことは認めまいと頭を振り 「あ、あんた達。説明は終わったんでしょ?だったら必要以上にくっつかない!」 「あら?やきもち?」 「ち、ちちち違うわよ!だ、誰が、そそそそんなお調子者の使い魔なんか!」 「そう?じゃあ、私がいただいちゃおうかしら」 「また発情期がやってきたのね!ああ汚らわしい」 「恋愛は人間の持つ自然な欲求よ。私は自然に従うわ」 女三人寄ればかしましいとはいうが(一人は蚊帳の外であるものの)、賑やかなひとときと ともに学院へ向かうルイズ達であった。 時刻がおやつタイムにさしかかろうかという頃にルイズ達は魔法学院へ帰還した。 フーケと『魔法の杖』を持参し院長室へ向かう一行。 院長室ではオスマン院長とコルベールが待機していた。 「…ミス・ロングビル?」 ミス・ロングビルの正体がフーケであったことに絶句する二人。 「あ~、その、あれじゃな。ミス・ロングビルを採用したのは確かにわしじゃが…」 「…ああ、私の想い人が…」 何か言葉を繋ごうとするが非常に歯切れが悪い。痺れを切らしたルイズが 「どうなされたんですか?」 とつつけんどんに伺った。すると、オスマン院長はおずおずと 「酒場でウェイトレスをしておった彼女を秘書としてスカウトしたのじゃよ。セクハラ要因 …だって、お尻撫でても怒らないんだもの…柔らかくて気持ちいかった」 フーケを登用した言い訳を始めた。それを聞き軽蔑の眼差しを院長に向ける3人のレディ。 フリオニールは無言を貫いたが、内心(いいなぁ。うらやましい)と羨望の眼差しを院長に向けた。 「私は騙されたのか…」 どうやらフーケは『破壊の杖』に関する情報(セキュリティなど)をコルベールから 聞き出していたようだ。色仕掛けを使ったようで、コルベールもボソッと「柔らかくて 気持ちいかった」と呟いた。片思いをしていた女性が実はビッチであることを知った時のような 失望感に苛まれるコルベール。ぶつぶつと独り言を呟き始めた。 室内がどんよりした空気になったので、フリオニールは流れを変えようと懸命に笑顔を繕って 「院長、その杖ですが、どうやら俺の住む世界の物のようです」 院長に返還した杖を指差した。 「おお、フリョウチーム君」 「フリオニールです」 「そうか、君の世界の物か」 「それに、フーケの使い魔もそうでした」 「何と!フーケの使い魔が…」 院長は捕縛され床に横たわっているフーケを一瞥した。すると、フーケは 「そこの…小娘が…変わった使い魔を…召還…だからあたしも…」 モンスターを召還した理由を途切れ途切れに語った。依然ダメージが残っているようだ。 「それは大変な任務じゃったのぅ。それでは、勇気ある諸君を称え『シュヴァリエ』の爵位申請を 宮廷に出そうではないか!と言ってもミス・タバサは『シュヴァリエ』の爵位を持って おるから精霊勲章を申請しよう!」 院長の発言にルイズ、キュルケ、タバサの3人は先程の軽蔑の眼差しから一転、希望に 満ちた輝く瞳になった。 やっと威信を回復できた、と胸を撫で下ろす院長にルイズが 「オールド・オスマン。彼には何もないのでしょうか?」 フーケを見張っているフリオニールを見て尋ねた。 「うむ。彼は貴族ではないからのぅ。残念じゃが何かを授けるわけにはいかん」 無念とばかりに頭を振る院長にフリオニールは 「お礼なんていいですよ、院長。その代わり元の世界に帰れる方法、お願いしますよ」 爽やかな笑顔で懸案事項の情報収集を念押した。 「もう!良い気分になっているのに水を差さないで!」 フリオニールのマイペースな発言にルイズは思わず大声をあげた。 「寂しいこと言わないで、ダーリン」 キュルケは目に薄っすらと涙を浮かべている。 「KY。DT」 タバサはいつもどおりの無表情でぼそっと呟いた。 (な、何か俺が悪者になってるぞ!) うろたえるフリオニールであったが、ようやく我を取り戻したコルベールが 「もうしばらくゆっくりしていってもいいではないですか。なにせ君はあの伝説のガンダ」 「オホン!」 フォローし何かを言いかけたが院長に阻止された。 「???ガンダム?」 「その件は後でわしから話そう。それでは諸君、今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。 主役はもちろん君たちじゃ。精一杯着飾ってくるのじゃぞい」 『フリッグの舞踏会』の単語を聞き、笑顔ではい、と返事をすると3人の乙女は院長室を後にした。 「ミスタ・コルベール。君はフーケを牢に繋いでくれたまえ」 「承知いたしました」 コルベールは院長に会釈をし、フーケに『レビテーション』の魔法をかけると部屋を出て行った。 院長は部屋に自身とフリオニールしかいないことを確認すると、 「さっきの話じゃが、君の『使い魔のルーン』は伝説の使い魔『ガンダールヴ』のものじゃ」 「へぇ~、それで?」 「伝説によると『ガンダールヴ』はあらゆる武器を使いこなし…」 「俺、今までもそんな感じだったけど…」 「…そうか。なら相乗効果を生むかもしれんのぉ」 「それで、院長。元の世界…」 「そうじゃ!『ガンダールヴ』を使い魔に持つメイジは伝説の魔法『虚無』の担い手であり…」 「はぁ。うちの「ご主人様」伝説なんですか。確かにすごい爆発起こしますけど(性格も)」 「何じゃ、フニオチンチン君。全く興味なさそうじゃの」 「フリオニールです」 「君が『ガンダールヴ』でミス・ヴァリエールが『虚無』の担い手かもしれんことはわしと ミスタ・コルベールしか知らん。このことは内密に頼むぞい」 「言われなくても大丈夫ですよ。貴族の友達少ないし」 「そうか」 (このじいさんを頼ったのは失敗なのかもしれない) フリオニールは故郷フィンと仲間の無事を思い巡らし深くため息を吐くのであった。 追記:数十年前、ワイバーンの群れからオスマン院長を救ったのはミシディアの魔導師だった。 魔法で撃退を試みるも数で圧される魔導師。奥の手である「サンダーギガース」に 変身し、いなずまと岩石で反撃をした。とどめに『まどうしのつえ』を使ったが (巨人なので杖は爪楊枝の要領で持っている)、それが仇となりあえなく自爆。 後日、院長は亡骸を手厚く葬り『まどうしのつえ』を形見として入手した。 前ページ次ページゼロのチェリーな使い魔
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150 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 02 56 ID /QzySgdP 虚無の曜日、トリステインの城下町をタバサと才人は歩いていた。 才人の両手には大量の紙袋にはいった荷物がある。 結論からいうと、勝手に部屋に入った事と、おねしょの事(タバサが悪いのだが)で一日荷物もちをすることになったのだ。 夏の日差しと合わさって非常に重労働だ。 ちなみに、ルイズに関しては、タバサが大きな買い物をしたくて男手が必要なのだと説明して、しぶった顔をしていたが、なんとか了解を得ることができた。 「次はあっち」 大量の荷物に押しつぶされんばかりの才人を尻目に、タバサは次の店へと向かおうとする。 「なんだよ、確かに無断で部屋に入ったのは悪かったけどさ。鍵くらい掛けとけばいいじゃんか……そうすりゃおねしょを見られることも――――いやうそ!何でも無いです」 ぶつぶつと文句を言っていた才人だったが、タバサが杖を握り締めて振り返ったのを見て口を噤んだ。 結局、丸一日を買い物に費やすこととなった。 太陽はもう傾いている。 赤い光を浴び、夕日が目にしみるぜ、などと痺れた両手に力を入れながら思っていた。 そこで才人は、ふと道端の露店に置いてある物が目に入った。 手に持った荷物を置き、それを手にとる。 「お、にいちゃん。目が高いね!それは異世界のマジックアイテムだぜ!効果は……」 「ちょっと黙ってくれ」 説明をしようとした商人を制す。せっかく説明しようとしたのに、気分の悪くなった商人だが、才人のマントに付けられたシュヴァリエの称号を見て何も言わないことにした。 才人は手に取ったそれを確かめる。外側は防水性に優れた素材で覆われているが、内側には肌触りのよい柔らかい透水性素材。 おおおおおおちつけ才人、こういう時には素数を数えるんだッ! 急に立ち止まった才人を、タバサは怪訝に睨む。サイトのマントをくいくいと引っ張り、行こうと意思表示をする。 「あ、あぁ、悪いちょっと待ってくれ。おい、おやじこれ売ってくれ」 シュヴァリエの年金で得たお金をポケットから取り出して商人に渡す。 「へぇ、……旦那も好きですねうへへ」 商人は、才人とタバサに交互に目をやり、にやにやといやらしい笑いをしながら商品を紙袋につめた。 151 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 03 33 ID /QzySgdP 学院に戻ると、すでに日は暮れていた。二人はタバサの部屋に戻り、買ってきた荷物を床に置く。 食事の時間も過ぎ、あとはもう寝るだけである。 そこでタバサがようやく労いの言葉を発した。 「今日はありがとう」 この言葉だけで感無量である。いや、決して俺はロリコンじゃないよ?自分より幼い子の喜ぶ姿は好きだけどロリコンじゃないよ? そこで才人は意を決したようにタバサに質問した。 「タバサ、聞きたいことがある。前に俺が見てしまったアレのことなんだけど、頻繁にあるのか」 タバサは何も言わない。部屋の温度が3℃ほど下がった気もするが、気のせいだろう。 「いや、別に貶してるわけじゃないんだ。ただ、もしそうだとするなら俺に解決策がある」 その言葉にタバサはピクっと反応した。 これはいける!言え、言ってしまえ俺! 「実はこれなんだけど」 そこで才人は先ほど露店で買った物をタバサに見せる。 「これは俺の世界のマジックアイテムで、これを装着していればもうアレに悩まされることは無いんだ」 いつの間にかタバサは興味津々に、才人が手に持ったそれを見つめている。 「本当?」 「本当!」 「じゃあ着けてみる」 「いや、ただ、これを装着するには非常に困難な手順がありまして、その……なんていうか……俺にしか無理なんです!」 「あなたに従う」 ベッドの上で、下半身に何も付けていないタバサが寝そべっている。 才人は、手に持ったそれを丁寧に開封する。 実は詳しい付け方なんて知らない。けれど、手に持ったそれを強く意識すると、左手のガンダールヴの証が輝きはじめた。 なるほど、これもある意味武器だ。こういう物を使って興奮する大人だっている。いや、俺は違うけどね。 そういう人種にとっては、効果抜群の武器だろう。 使用方法がはっきりと脳に浮かび上がってくる。 タバサに腰を浮かせるように足をそろえて持ち上げ、それをもぐりこませる。 次に足を開かせ、三分の二ほど残った部分をへそ少し下のあたりまでかぶせる。 最後にお尻のほうにあるマジックテープを、腹部の両端で留めて完成だ。 「こここ、これで完成です」 ベッドの上には、オムツ姿のタバサが寝そべっている。 装着されたオムツをぺたぺたと触りながら、本当にこれで大丈夫なのかと思っているようだ。 「じゃ、じゃあ俺はこれで、あああ朝にまたくるよ」 部屋を出て行こうとした才人を呼び止める。 「サイト………ありがとう」 才人は部屋を出たその足で、オムツ姿のタバサを目に焼き付けて、トイレの個室に駆け込んだ。 152 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 04 39 ID /QzySgdP 彼はああいったけど、本当にこれで大丈夫なのかな。 自分の下半身に着けられたそれをぺたぺた触りながら思った。 彼が部屋を出て行こうとする。 恥ずかしい格好させられたけど………うん、私のことを気遣ってくれたんだし、わざわざ自分のお金で私に買ってくれたんだし。 「サイト………ありがとう」 とだけ言っておいた。 パジャマに着替えてベッドに入る。 下半身に違和感があるけど、アレをしちゃうよりはマシだ。 そう思いながら眠りについた。 その夜、また夢を見た。 ラグドリアン湖で私と彼が遊ぶ夢。 親友のキュルケもいる。 彼の主人も、薔薇を口にくわえた金髪も、同じ金髪の縦巻きロールも居る。 岸辺では喋る剣とこっぱげが何か話をしている。 沢山の気が置けない人たち。その中で、私も楽しそうに笑っていた。 ひとしきり水遊びを楽しんだところで、目が覚めた。 水の夢を見ると大抵おねしょをしてしまう。 今日も、そうなのかな………、と暗鬱に思いながら布団の中に手を入れてみた。 そこは濡れていなかった。 変わりに彼が着けてくれたマジックアイテムの中が少し暖かい。 お漏らしはしてしまったみたいだけど、布団やパジャマのズボンはまったく被害がない。 すごい!こんな物があるなんて!彼の居た世界の魔学力は世界一ではないだろうか。 そこでドアがノックされた。 ベッドから出てドアを開けると、彼が立っていた。 まだ朝早い時間だというのに、彼は私のところへ来てくれた。 そんな彼の事を嬉しく思いながら部屋へと招き入れた。 153 名前:オムツタバサ ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 06 23 ID /QzySgdP 朝早くに目が覚めた。 何故ならば、俺にはまだ課せられた任務があるからだ。 汝に問う。オムツプレイの醍醐味とは何ぞや。 オムツを履かせることか?否。それはただの過程である。 オムツを履かせることに対する羞恥心?否。俺は決して恥ずかしくない。 オムツを着けた少女の恥じらいの観察?否。この世界ではオムツに対する恥じらいは望めない。 オムツプレイの醍醐味、それは!一晩たって、ぐしょぐしょに濡れたオムツを脱がせるその瞬間である! 自分の放出した尿を見られるという羞恥に満ちた少女の表情を楽しむ事が!! そして汚れた下腹部をきれいに!キレイに!!綺麗に!!!拭きあげてやる事こそがオムツプレイの最大の醍醐味だと言えよう! 装着に関しては誤魔化せても脱ぐのは自分でしてしまうかもしれない。そのタイミングを逃さぬよう、俺は朝早くからタバサの部屋の前で待機する。 部屋の中で音がした、おそらくタバサが目を覚ましたのだろう。 隊長殿!任務を開始します!!生きて戻れぬやも知れません、けれど、やらなくちゃいけないことがあるんだぁぁ、男の子にはぁぁぁぁ!!! 部屋に入ると、タバサをベッドに横にさせる。 ベッドに横になったタバサは、顔を背けて足をひらいた。恥ずかしいらしく、頬に赤みが差している。 これだ!これを見たかったんですぅぅ!俺は! 両側のマジックテープを剥がしてオムツを捲くる。 内側の柔らかい透水性素材の部分が黄色く変色していた。 用意しておいたトイレットペーパーを手に取り、股間に残った雫を丁寧に拭きあげる。 君たちは、オムツを脱がした女の子の処理の仕方をご存知だろうか? こう、一見ただ拭くだけに思われるが、実は違う。 尿のみの場合、下から上へ拭くのだ。そうすることで秘所が汚れなくなる、が、大の時には逆に上から下へと拭かなくてはならない。 理由は言わずもがな理解してくれるだろう。 ん?なんで俺がそんなことを知っているかって? ガンダールヴの能力が教えてくれたんだよっ!! 尿を綺麗にふき取ると、両足を抱えて腰を持ち上げオムツを引き抜く。 折りたたみ、マジックテープで封をしてあとは捨てるだけだ。 それを捨てようとベッドから立ち上がると、タバサに後ろから抱きつかれた。 「今日の夜も、それを着けてほしい」 154 名前:D_K ◆qrZtCzv0Ak [sage] 投稿日:2006/11/24(金) 17 07 44 ID /QzySgdP おもらし小説完結編 やっぱりタバサはお漏らしっ娘!
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女王様調査中につき(タバサ) とりあえず、腰が抜ける前に開放された才人は。 名残惜しそうに見つめるアンをとりあえず浴場に案内して、自分は用事があるから、と学院内にシルフィードを探しに出た。 そしてアホ竜はすぐに見つかる。 というよりも、アホ竜が才人を発見した。 「捜したのねサイトーっ!『呪印』捕まえたのねーっ!きゅいきゅい! …って随分顔色悪いのね?」 シルフィードが指摘するとおり、才人の顔色は悪かった。当然である。 発情した牝奴隷が、一度咥え込んだ主人をそうそう離すはずもない。 ちなみに牝奴隷の攻め手が緩むまで本日は5ラウンドを消化した。 才人の顔は軽く青ざめ、心なしか腰が引けていた。 「ああ…そう見えるか…。 実際しんどいよ、今日は正直もう寝たい気分」 なるべくなら、厨房によって生卵の2、3個も補充したいところではある。 しかし時間は昼を少し過ぎた頃。寝るには少々日が高い。 それに。 「何を言ってるのね!早く『呪印』を取り出さないと、あとの二人がやばいのね!」 そう言いながらシルフィードの広げた小さな紙切れには、二人の少女の名前。 タバサと、ティファニア。 この二人に、残り二匹の『呪印』が取り憑いているのである。 ちなみに『呪印』とは、人に取り憑き、その魔力を食らう、魔法生物である。 「今日中に二人ともなんとかしないと、たいへんな事になるのねー!」 『呪印』が食らうのは魔力。つまり人の心の力である。 心の力を食われたものはどうなるか。心の死んだ人間は…すなわち廃人である。 しかし。 「あとの二人って…イタヅラだけで済まないじゃん…」 げんなりした顔で才人は言う。 『呪印』を宿主から引き剥がす方法は唯一つ。 宿主を興奮させ、体内の活動を活発にさせればいいのである。 つまり、タバサとティファニアにイケナイ悪戯をして興奮させなければならないのであった。 だがそれこそが問題であった。 そもそもこの二人、才人と肉体関係がある。 タバサはここ数ヶ月で既に全身開発済みだし、ティファニアに至っては最近才人との関係が進展してなんだかはりきりつつあるのだ。 そんな状態で悪戯なんかしたら間違いなく、その代償に才人が廃人になることは目に見えていた。 そんな才人に、シルフィードが笑顔で緑色の丸薬を手渡した。 「大丈夫なのね!はいこれ」 「…ナニコレ」 「淫竜特製の精力剤なのね!コレ呑んで元気になるのね!」 「…どっから手に入れてんだよこんなもの…」 しかし背に腹は換えられない。 才人はその丸薬を手に取ると、丸呑みにした。 「すぐは効かないと思うのね。でも移動時間中に回復すると思うから」 「…そうなることを願うよ」 やっぱりゲンナリした顔で、才人は応える。 そして、シルフィードは元気一杯宣言した。 「さー、次はおねえさまの番なのねー!きゅいきゅい!」 私は知っている。 この感覚を。 何の感慨も沸いてこない、心のどこかにぽっかり穴が開いているような、この感覚。 そう、確か、シルフィードが言っていた。 『呪印』とかいう魔法生物が、私に取り憑いた時の感覚。 …いつの間に。というより、まだいたの? 私は椅子に掛けたまま、あのときの事を思い出していた。 サイトに、思い切り辱められた。 窓に押し付けられて。 外から見えるように。 思い切り脚を開かされて。 乱暴に、何度も犯された。 …とくん。 その回想に、私の中で何かが震える。 …あれ…? 前の時と違う。 前は、この程度じゃぜんぜん心が震えなかった。 というよりも、サイトに愛撫されている間ですら、身体だけが反応して心が一切動かなかった。 でも。 今は違った。 サイトとのえっちを思い出す。 …とく、とく。 背筋に軽い悪寒が走って、私の中を微弱な官能が走り回る。 …いつも自分でする時みたいに、乱暴な衝動じゃあないけど。 確かに私の心は震えている。 この『呪印』は魔力を、心の力を糧とする。 しかし、宿主の身体の中にいられるのは、宿主の心が震えていないときだけ。 羽虫が火に入れないのと同じような理屈だろうか。 だったら、心を震わせて追い出してしまえばいい。 …あの時、サイトが私にしたみたいに。 きっとサイトは来てくれる。それまで、私は私の勇者が来るまで、心を震わせていればいいんだ。 私は椅子の上でショーツを脱ぐ。 つう、とショーツと私の女の部分の間に、粘液の糸が渡される。 そこは、サイトと逢うまで、ずっと一生使うことはないだろうと思っていた場所。 今は、彼を悦ばせるためだけに存在する、彼のためだけの場所。 そして将来は…彼がよければ、なんだけども…。 うんと、彼の子を…孕むための、場所。 …ちょ、やだ、私何考えてるのかしら…っ! その想像に、また心が震える。頬が熱くなる。 よ、よし、この調子で…! そして私は妄想する。 一番、恥ずかしい事を。彼にされて、一番、嫌で、恥ずかしくて、死にそうになることを。 それは、『あの行為』を彼に見られること。 汚いものを吐き出す自分を、彼に見られること。 それを、想像する。 …ちゅく。 指が、自然に股間に伸びていた。 そこは、自分の妄想で、とろとろに融けていた。 …やっぱり私、変態さんになっちゃったのかも。 恥ずかしくなるのがキモチイイ。すごく、ゾクゾクする。 こんなの、普通の女の子は考えない。絶対に。 …こんな、淫乱で変態な女の子は、だれも娶ってくれないだろう。 それがたとえ、ガリアの王族でも。 だから私は、心に決めている。 私は彼の物。ずっと一生。 私に刻まれた彼の刻印は、一生消えない。 彼の跡をなぞる様に、指が勝手に動く。 湿った私の中を、指が前後する。 ぐちゅ、ぐちゅ。 だから、サイトには、責任を、とって、もらわなきゃ…。 ゆびで、硬くなった所を押してみる。 ぷちゅ、くちゅっ! きも、ちいい…っ! こんな、えっちな、あ、あな…。 えっちな、か、からだに、されちゃったんだから…。 「サイト、さいとぉ…」 声が、かってに…! でも、よばなきゃ…! わたしは、考える…。 さいとに、あのひとに、見られてるって…。えっちな、だめな私をいっぱい…。 やだ、みないで…!でも、もっと見て……! 「さいとぉ…!は、はやくぅ…!」 ばたん! 突然扉が乱暴に開いた。 来た。来てくれた。 私の、勇者様…! 「助けに来たのねおねえさまーっ!」 お前は呼んでない。 私は全力で隣の椅子に立てかけてあった杖を、シルフィードの脳天めがけて放り投げた。 「痛いのね、酷いのね〜」 杖の直撃を顔面に食らったシルフィードは、真っ赤な顔を抑えてうずくまり、ひんひん泣いていた。 タバサはそんな使い魔をいつものように冷たい目で見下ろした後、すぐ後ろの人物に気がつく。 そして、その直前までしていた行為と、両の足首に引っかかっている濡れたショーツを思い出す。 タバサの頬に朱が注した。 そして、思わずそんなタバサを注視してしまった才人に言い放つ。 「…何見てるの」 普段の彼女ならそんな事は言わないはずだ。 思わず泣きそうになり、真っ赤になってその場にしゃがみこむだろう。 『呪印』の影響だと、才人もタバサも理解していた。 すぐに、タバサはその事を謝る。 「…ごめんなさい」 タバサはすぐに謝るが、その間にも『呪印』の影響か、昂ぶった心が冷めていくのが分かる。 また、あの時と同じ。 いや、少し違う。 今、タバサはこの場から立ち去りたいという衝動に駆られていた。 才人がここにいるというのに、羞恥を感じる心も冷めているというのに。 前の『呪印』と違う…? タバサがそう疑問を感じた瞬間。 「今だチャンスだ!なのねー!」 突然のシルフィードの叫びとともに、タバサの周囲に、光の輪が現れる。 「ぷろてくとほ〜〜るど!」 シルフィードはいつの間にやら魔法の詠唱を終えていたらしい。 タバサの周囲に現れた光の輪が一気に縮まり、両腕と足を拘束する。 タバサは自分を拘束するシルフィードを睨む。 その目はすでに自分の使い魔を見る目ではなかった。 場末のチンピラにでも向けるような、冷たい目であった。 「くぅ、『呪印』の影響なのね!おねえさまがこんな目でシルフィを見るなんて!」 悔しそうにシルフィードは拳を握り締めるが。 才人は容赦なく突っ込む。 「普段と変わんないんじゃねえの?」 「そんなことないのね!シルフィとおねえさまは鉄の鎖よりも硬い『使い魔の契約』で結ばれて」 「…解消できるなら契約解消したい」 拘束されたタバサからも、容赦ない突っ込みが入る。 シルフィードは開いた口が塞がらなくなった。 そして。 「あーもうわかったのね! おねえさまには最高の恥辱をプレゼントしてやるのねっ!」 キレた。 シルフィードはすたすたと部屋の隅にある棚に寄って行く。 まさか。 タバサはある事に思い当たる。 そしてそれは的中する。 「あったのね…。コイツでひんひん言わしてやるのねー!」 シルフィードが棚から取り出したものは。 二本のガラス瓶と、箱。 どうしてシルフィードが、これの場所を知っているの…!? タバサの瞳が、驚愕に見開かれる。 「そ、それは…」 「くっくっく。その通りなのね。 おねえさまがいっちばん恥ずかしい事を、サイトの前でしてもうのね…!」 シルフィードがぱちん、と指を鳴らすと、タバサを拘束していた光の輪が動き、両足を強引に開かせる。 短いスカートの内側から、真っ白なタバサの肌と、濡れた桜色の牝の器官が露になる。 それを見つめる才人の喉がごくりと鳴った。 床の上で人の字にされたタバサは、必死に懇願した。 「や、やめてシルフィード、お願い…!」 「もー知らないのね。シルフィは完全にトサカにきました」 シルフィードはタバサの懇願をそう受け流し、無常にも箱を開けてしまう。 そこから取り出されたのは、大きな注射器と、羊の腸でできた、耐水性の細いチューブ。チューブは片方の先端が三重に折り曲げられ、固められてこぶのようになっていた。 シルフィードはてきぱきと注射器とチューブをつなぎ、注射器の中に角ばった青いほうのガラス瓶の中身を注ぐ。 軽い粘りをもったその液体は、注射器を満たす事なく空になる。 それを見たタバサは蒼白になる。 「だ、だめ、原液で使ったら…!」 この薬は本来、薄めて使用するものなのだ。 「…なあシルフィード、なにそれ?」 才人の疑問に、まずタバサの顔が真っ赤になる。 シルフィードはそれを見て満足そうに嗤う。 「聞いて驚くのねサイト。 おねえさまは、サイトにお尻でしてもらうために、これでお腹をからっぽにしてるのね…! さあ、サイトの前でおもらししてもらうのねー!」 シルフィードはノリノリで原液の詰まった注射器の先から伸びるチューブを、タバサの肛門へ持っていく。 タバサの顔が、羞恥と恐怖に歪む。 やだ。サイトの前で、そんな、そんな…! タバサの頬を、涙の筋が伝った。 「いや、お願い、やめて、それだけはっ…!」 「くくくくく…何を今更…!さあ、中身をぶちまけて、特殊な趣味の皆様をさんざん悦ばせるがいいのね…っ!」 ごすん。 「いったーい!何するのねサイト!?」 そんなシルフィードの後頭部を、才人の拳が直撃する。 才人は言った。 「いーかげんにしろ。シャルロット泣いてるだろ。 それに、ほれ」 才人の指差した、僅かに覗くタバサのお腹の上に。 複雑な文様が、浮かび上がっていた。 先ほどの責めで興奮したタバサから、『呪印』が剥離していた。 「さっさと捕まえろよ」 「く、くう、仕方ないのね…!」 本来の目的を思い出したシルフィードは、呪文を唱える。 「風の韻竜、イルククゥの名に於いて。我は汝を封印する」 詠唱が終わると、シルフィードの手から光が伸び、剥離した『呪印』を捕らえる。 それはシルフィードがいつの間にか手にしていた一冊の本に、吸い込まれる。 これで、『呪印』の封印は完了した。 そして。 「さー、それじゃあシルフィは次の『呪印』を捜しに行かなきゃなのね」 逃げようとしたシルフィードの首根っこを、才人ががっしりと掴んだ。 ぎぎぎぎ、と大量の冷や汗と共にぎこちなくシルフィードが振り向くと、そこには笑顔の才人が。 そして、その奥には。 怒りのあまり完全に表情の消えた、雪風の二つ名を持つ、シルフィードの主人がいた。 「じゃあ、お仕置きされてみようか?」 「いーーーーーーやーーーーーーーーーー!」 どかぁん!かっきん!ばこばこばこばこばこばこばこばこばこばこばこばこ…ぼりっ。 「…今日はこの辺で勘弁してあげる」 「…は、はひ。もういたひまへん…」 吹っ飛ばされ体を半分凍らされひたすら杖で頭を小突かれて、シルフィードは半死半生で床に転がされた。 「さてと。んじゃ次の『呪印』捜しに行かないと」 それを横で見ていた才人は、そそくさと部屋を出て行こうとした。 しかし。 「…待って…」 その背後から掛けられる、鳴きだしそうな少女の声。 …いや分かってるんだけど。ここで振り向いたら負けだって。 理性がそう囁くが、才人の本能はそれよりコンマ5秒早く、才人を反転させていた。 そして、理性の予想どおり。 才人の振り向いたそこには。 ベッドの前で、両手でスカートのすそをたくしあげ、本気度2000%の潤んだ目と、火照った頬で、才人を見つめる青い髪の少女。 もちろんスカートの下ははいてない。白いニーハイソックスと黒いローファー以外は。 ごくり、と才人の喉がなる。 「…お願い」 消え入りそうな声で、タバサが囁く。 「ガマン、できないの…」 何が、と聞くほど空気が読めない才人ではなかった。 「して…」 そこまで言ったタバサを。 才人は、彼女の予定通りベッドに押し倒したのだった。 『呪印』の抑制の解けた私の心と身体は、サイトの愛撫に過剰なほど反応していた。 それが証拠に、サイトに押し倒された時点で、私の心臓は痛いほど脈打っている。 私の唇を乱暴に塞ぐサイトの耳に、この恥ずかしい音が届いてるんじゃないだろうか。 そして、そう考えると同時に、背筋を這い回る恥辱によるたまらない悪寒…快感。 恥ずかしい…でも、キモチイイ。 羞恥の感情が快楽に繋がるなんて、絶対おかしい。 私の中の『常識』が、たまらない快感に嬌声と蜜を溢れさせる私の身体を否定する。 でも…否定するたび…否定されるたび…。 股間から、どうしようもないほどいやらしい粘液が溢れてくるのがわかる。背筋を、快感が駆け回るのが分かる。 サイトの声が、愛撫と一緒に耳元で囁く。 「シャルロット…今どんな格好してるかわかる?」 え…? 私は、今まで甘く流れ込んでくる快楽を受け止めるのに精一杯で、自分がどんな格好をしているのかなんて気にも留めていなかった。 その質問と一緒に、サイトの責めが停まる。 いつの間にか。 サイトは私の両足首を掴んで、私の身体を二つ折りにしていた。 頭の上まで足が来て…私の…あそこが…。 丸見え…! 「見える?シャルロット、こんなにべちょべちょ」 お尻の向こうで、サイトが…。 濡れた私に…! ちゅるるるっ! 「あひぃ!」 舌で塗れた部分を舐められた私の喉が勝手に鳴る。 物凄く恥ずかしい格好をさせられて。 それでも、私の身体は歓喜に吼える。 心で否定しても、駄目。 「やだっ、こんなっ、恥ずかしっ…やだぁ!」 声にも出してみるけど…駄目。 私の身体は意思を完全に無視して、びくびくと震える。 腰の奥の器官が、サイトを、牡を欲して高鳴る心臓よりも強く脈打つ。 私の牝の顎から、牡を欲する唾液が、どんどん分泌される。 私が高まっていく。高められていく。 喉がいやらしく謳って、限界が近づいてくる。 やだ…きちゃう…きちゃう! 「やっ!らめぇ!もっ、いっ、くぅっ…!」 ヤだ!サイトがなかにいないのにぃ!なかに、ほしいのにぃ…!やだやだやだや……、 だ──────────………………………………………………。 タバサが絶頂の余韻から目を醒ますと、才人の上でうつ伏せになっている自分に気がついた。 「…サイトの意地悪」 乱れた半裸の状態のまま、タバサは軽く朱に染まった頬で才人を半眼で見上げ、文句を言う。 それは、恥ずかしい格好で逝かされたことに対する抗議。 しかし、身体を完全に才人に預け、胸板に頬を寄せて掌で才人の身体を撫でながら言っても説得力はない。 「…ンなこと言って、シャルロット思いっきり感じてたじゃんか」 「…しらない」 才人の言葉に、拗ねたようにぷい、とそっぽを向いてしまうタバサ。 それでも、タバサは才人の上からどこうとしない。彼の体温に肌触りに、もっと融けていたかったから。 もっと密着したくて、タバサは足を動かす。 すると。 太股の内側に、熱くて硬くてぬるぬるしたものが当たった。 それは、先ほどからタバサの欲しているもの。 タバサの腰の奥の牝の器官が、その刺激に完全に覚醒し、牡を喰らえとタバサを動かす。 潤んだ目で、タバサは才人を見上げた。 視線が絡み合う。 才人はタバサの視線の意味を汲み取り、タバサの両脇を抱え、抱き上げる。 タバサはそのまま才人をまたぎ、馬乗りになる。タバサの桜色に染まった白い臀部が、脈打ち、屹立する才人に押し当てられる。 タバサの視線が訴える。才人は軽く頷いた。 愛する人の許可を得たタバサは、膝立ちになると、腰を浮かせる。 真っ直ぐ天を衝く肉棒をまたぐと、それに指を添えて、自分の入り口に押し当てる。 牝の期待に溢れた蜜が、牡の唾液と混じりあう。 入り口に押し当てられる温度と硬さに、タバサの喉から溜息が押し出される。 もう一度、タバサは才人を見つめる。 「いいよ。シャルロットの好きにしな」 今度は、言葉で応えてくれた。 歓喜に震える心が、身体を動かす。 腰が自然に下がり、ずぶずぶと才人を飲み込んでいく。 身体を削られる快感が、タバサの喉から牝の啼き声を溢れさせた。 「あ…はぁっ…!」 それでも無意識に、タバサは声を絞る。 それは、恥ずかしいからではない。 サイトが、そうしたほうが好きだから。サイトが、そうしたほうが興奮するから。 愛する男の悦ぶことを、この青い髪の小さな少女は、完全に知り尽くしていた。 そして、その小さな体はあまりにもスムーズに、才人を奥まで咥え込んでしまった。 ごり…。 小さな少女の膣道は、男の剛直で奥を押し上げられる。 「はぁ、はぁ、はぁ…」 奥を犯される快感に、荒い息をつきながら、タバサは才人の胸板に両手をつく。 そしてそのまま、奥に当たる才人の感覚を愉しむ。 「シャルロット…動かないの?」 才人の言葉に、タバサは、行為の最中とは思えないほど、優しく笑って応えた。 「サイトにおくまでされてるの…キモチイイの…」 それは答えになっていなかったが、才人はそれに満足した。 そのまま動かず、動かないタバサを優しく見守る。 二人の中で、快感が静かに高まっていく。 「あっあっ…びくびくって…してるぅっ…」 「シャルロット…気持ちいいよ…」 「隙ありなーのねー!」 そんな二人の睦言を、アホ竜の声が引き裂いた。 アホ竜は青い髪をなびかせ、全裸で背後からタバサに抱きついた。 空気の読めない自分の使い魔に、振り返りながらタバサは、行為の最中とは思えないほど、冷たい視線を送る。 「引っ込め」 その声は二つ名の『雪風』のごとく、完全に冷え切っていた。 しかしアホ竜は怯まない。 「コレ見てもそんなこと言えるのかー?なのねー!」 その手には、一本の青い張形が握られていた。 それは、どこかで見た形。 「そ、それ…!」 タバサの顔が驚愕と羞恥に染まる。 シルフィードは才人に貫かれたタバサを抱き締め、その顔の横で『才人に向かって』説明を始める。 「これはねー、おねえさまがオナニー用に買ってきた張形なのねー。でねえ」 「し、シルフィ…!やめなさ…」 止めようとしたタバサの口を、左手で器用に封じてしまう。 その力は意外に強く、タバサが両手で引き剥がそうとしても、適わなかった。 そして、タバサとシルフィードの下敷きになっている才人は、その話に興味をそそられた。 腰を浮かそうとしたタバサの臀部を掴み、もう一度奥まで犯す。 「ふぅぐぅーっ!?」 「で?続き聞かせてよ」 恥辱に抵抗するタバサを腰を捻りながら快感と力で抑え込み、才人はシルフィードを促す。 シルフィードは、右手で張形を見せ付けるように、ぷらぷらと指先だけでつまんで揺らしてみせる。 そして続けた。 「これね、サイトのおちんちんと同じ形なのね。 おねえさまったら、ケースに並んでるコレ見ただけでサイトのだって気付いたのね」 「ふ、ぐぅーっ?」 どうして、どうしてアナタがその事しってるのっ…!? 心の中でそう尋ねるタバサの声を、使い魔であるシルフィードは受け取った。 「ふふん。シルフィを甘く見ちゃダメなのね。 おねえさまがそわそわしながら一人で街に出かけるときはたいがいえちぃ道具を買いにいくときだから、こっそりつけてったのね。 でねえ、サイト。おねさまがコレ使ってどういうことしてるか知りたくなぁい?」 悪戯っぽく笑うシルフィード。 その心の中に、絶叫が響く。 やめて!お願いやめて!そんなこと、サイトに教えないでぇ! 涙交じりのその声に。 「もー遅いのね。 サイトも知りたいでしょぉ?」 シルフィードは拒否を示した。 そして、才人の答えがタバサの絶望を後押しする。 「うん、知りたい知りたい」 より一層強くなるタバサの力。 しかし捻りをいれて奥を犯され、力が抜ける。 もう…だめぇ…! タバサの心が絶望と…とんでもない羞恥の快楽に塗りつぶされる。 「それはねぇ…こうしてるのね…!」 ずぶぅ! シルフィードが張形を持ち替えてタバサに密着すると。 タバサの目が大きく開かれ、そして開放された口から嬌声が漏れた。 「あっひ───────────────!」 才人を容赦なく締め付け、絶頂するタバサ。 そして、才人の剛直に、タバサの締め付け以外の刺激が襲ってくる。 それは、薄いタバサの肉を挟んで、感じる硬い異物。 「おねえさまったら、コレでお尻でオナニーしてるのね。 お尻で張形でオナニーで感じるなんてとんでもないへんたいさんなのね。きゅいきゅい」 言いながらシルフィードはタバサの肛門に突き刺した張形をゆっくり引き抜く。 ぶじゅじゅじゅじゅじゅ…。 肉を巻き込む音をさせ、才人の一物に張形の振動とタバサの脈動が伝わる。 感じなれた異物の排泄感と脈打つ牡の快感に、タバサの意識が強制的に覚醒する。 絶頂の嵐が、タバサを襲っていた。 「やぁ!らめぇ!こわれっ、こわれ、ちゃうっ!」 タバサの中で、乱暴な快楽が弾け、才人を締め付ける。 同時に括約筋もぎゅうぎゅうと締まり、才人そっくりの張形を締め上げる。 「ぎちぎちなのねー?おねえさまひょっとしてイきまくってるー?」 「あ、ひ、や、めぇ…はっ、あっ、もっ、らめえ…!」 「突く、たんびに、逝ってる、みたいだなっ?シャルロットっ?」 前後からの言葉責めにさらに絶頂しながら、タバサの肉体は意識を引き戻し、手放す。 そして、その責めは、才人の開放によって終焉を迎える。 「よ、よし、逝くよ、シャルロット、逝くよ───────っ!」 「いいのねサイト!おねえさまの中でいっぱい出しちゃえー!きゅいきゅい!」 どくどくどくどくっ! 「き、ひ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 最奥で牡の迸りを受け止め、最後の絶頂を迎えたタバサは、ことり、と才人の上で事切れたのだった。 そして才人とアホ竜のコンビは、気絶したタバサを寝巻きに着替えさせ、体を拭いて、ベッドの上に寝かせて、タバサの部屋から立ち去った。 「さーてサイト、最後の『呪印』捜しにいくのねー!」 「…なあシルフィード、シャルロットにあんな酷い事してお前」 「明日は明日の風が吹く!なーのねー!」 冷や汗ダラダラのシルフィードの中に、静かに燃えるタバサの怒りが伝わってきた。 …シルフィ。帰ってきたらお仕置きだから…。 シルフィードは心に響くその声に、後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない後の事は考えない、と何度も自分に言い聞かせる。 そんなシルフィードの中に、もう一度、今度は少し優しい声が響いた。 …でも、ちょっとはキモチよかったから…。 やっぱり、このご主人へんたいさんなのね、と思わず考えるシルフィードだった。 …半殺しでカンベンしてあげる。 「鬼!悪魔!変態ーっ!きゅいきゅい!」 「わ、いきなりなんなんだよシルフィード?アホの子みたいだぞ!」 廊下の真ん中でいきなり叫んだアホ竜に、思わず突っ込む才人だった。
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ルイズが召喚したのはよく分からない薄い箱だった。両手で掴むとしっくり来る程度のサイズで、ツルツルしているのにガラスのような硬度は無い不思議な感触。 コルベールが言うには天地が吹っ飛ぶほどの魔力が込められているらしく、呆然として契約してしまった後でオスマンまで一緒になって調べていた。 まあとにかく凄い使い魔だということで、相変わらず魔法は使えずともゼロだのなんだのとは言われなくなったのだが、学校のメイジ全員をかき集めても使い方が判らないというのだけが問題だ。 研究だ何だと理由をつけて取り上げられてしまっていたが、召喚の儀式から2回の虚無の曜日を挟み、今さっき渋い顔をしたコルベールが部屋に持ってきてくれた。 「ミス・ヴァリエール。ともかく凄い使い魔なのだから、大切にしなさい……」 と言っていたが、ならいきなり取り上げる事は無いんじゃないかなと思うルイズである。ともかくまずは自室の机に座って、台形に近い形の使い魔をじっくりと見つめた。 左側に十字の突起があり、右側には○と×のかかれた丸い突起がついている。色は全体的に蒼いが、突起の間には白い長方形が描かれており、そこが最もツルツルしていて不思議な感じだ。 厚みは2セントほどで、裏側と思われる方にはプロアクションリプレイなる文字が書かれていた。ミスタ・コルベールはそんな事を言っていなかったけれど、見落としたのだろうか? 文字の下には使い魔のルーンがしっかりと刻まれており、やはりこの不思議な箱が使い魔なのだと再認識する。 「ほえっ?!」 振ったりひっくり返したりしていたら、ピコーンという耳慣れない音が響く。うっかり落とすところだったが、なんとか持ち直して表を向けた。 長方形の部分が光を発しており「ホンセイヒンハ ヤマグチノボルシ ノ セイシキナ ショウヒンデハ アリマセン」という文字が浮かんでいる。はっきり言って意味不明だ。 分からないのでとりあえず×のボタンを押してみると、長方形の部分がめまぐるしく色を変え始めた。 -ゼロの超インチキな使い魔- みたことも無いほど色鮮やかな何かのマークが浮かんだと思ったら、再び画面に文字が現れた。ルイズは興奮に肩を震わせながら見つめる。 長方形の中の左のほうに、上から順に「マホウ」「スキル」「ステータス」「アイテム」等と並ぶ。十字の突起で上下を選べるようだ。 出来るだけ刺激を与えないように箱をそっと机の上に置き、細心の注意を払いながら最も興味のあった「マホウ」を選択して○を押した。再び画面に光が踊る。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 「カゼLV-- ツチLV-- ミズLV-- ヒLV-- キョムLV00 セイレイLV--」 「カイゾウ シタイ コウモクヲ エランデ クダサイ」 現れたのはそんな文章だった。まだよく分からないが、キョムLV00というのがルイズの目を引く。他のは--なのにこれだけ数字だ。 まさか自分が虚無の訳がないが、勝手に自分の名前が書かれていることを考えると、もしかして魔法の才能を見られるマジックアイテムなのかとルイズは思った。 十字を動かしてキョムLV00を選択し、○を押すと再び画面が切り替わる。 「キョムLV■■」 「ジュウジキー ノ ジョウゲ デ センタクシテ クダサイ」 「ケッテイ○ トリケシ×」 ゼロという数字が非常に気に食わなかったので、とりあえず限界まで上げて○を押してみた。確認の文字が出たが当然○だ。 「……?! な、なによこれっ!」 頭の中を無数の呪文が駆け巡っていく。エクスプロージョン、イリュージョン、ワールドドア、ディスペル……。 同時に世界がクリアになったかのように広くなり、体の中の魔力とその扱い方が息をするみたいに分かった。まさか、そんなわけが……。 「い、イリュージョン!」 一番安全そうだった呪文を唱えながら杖を振ると、机の上に手の平サイズのちぃ姉さまが現れた。これはヤバイ。マジでヤバイ。 使い魔を見ると先ほどの文字に切り替わっていたが、キョムLV00がキョムLV99に変わっている。もしかして虚無極めちゃったとか? 鼻息を荒くして片っ端から選択し、同じように表示されていた魔法全てを限界まで上げた。温度も空気の流れも敏感に感じるようになったきがする。ついでにフヨフヨしてるセイレイまで見えた。 「錬金! 偏在!」 魔法は当然のように成功。今までの努力は何だったのかと小一時間ほど文句を言いたくなり、金の山を前に偏在で20人に増えた自分同士であれこれと言い合う。 瞬時にして全ての魔法をマスターしてしまったルイズは、更なる物を求めて使い魔を手に取った。 「私は生まれ変わった! 無敵として! 最強として! おお、世界はこんなにも素晴らしい!」 あれからステータスの部分も弄り、魔力やら回復率やら体力やらも限界まで上げた。力とか素早さは筋肉ムキムキになったら嫌なのでちょっとにしておいた。 胸のサイズも変えられたが……。部屋が胸でひどい事になったので保留にした。あんなにいらないよ、というわけで相変わらずのツルペタ。 でもいつでも巨乳になれると思えば、重いものを常にぶら下げているより余程よい。もう一晩中走っても疲れないけどね。 試しに自分の部屋が金で埋まるほど錬金してみたけれど、どんなに魔法を使っても殆ど魔力を使わないし、使っても瞬きをすれば直っているので使い放題だ。杖を持っているフラグとやらを立てたら素手でもよくなった。 出会った人間全てに抱えるほどの金貨と水の秘薬を押し付けながら食堂に行き、1本で家を買えるほど高価なワインを増産して厨房に持っていく。もう目の前はバラ色過ぎた。 廊下に蒔いて歩いた金を取り合う生徒を肴に、豪華な料理と最高のワインに舌鼓をうつ。たまに流れ弾が飛んでくるけれど、カウンターを使っているのでルイズだけは平穏。 ワイングラスを傾けながらデザートを待っていると、タバサという生徒が心を直す薬とやらの話をしてきた。機嫌は最高潮なのでシャワーで使えるほどプレゼントする。この幸せを皆で! ……その日から本当に色々な事があった。 例えばワールドドアで実家に日帰りして、ちぃ姉さまを水の秘薬を沸かしたお風呂とマジックアイテムを駆使して治したのが次の日。 ハヴィランド宮殿にワールドドアで直接行って、周囲を取り囲んでいたレコン・キスタを40人の偏在と100体の巨大鋼鉄ゴーレムで完膚なきまでに叩き潰したのが一週間後。 アンリエッタとウェールズ皇太子との結婚パーティーが1ヵ月後。 タバサの要望でガリアに突撃して、シャルルを生き返らせた後で泣き崩れるジョゼフを蹴り飛ばし、タバサが女王になったのが2ヵ月後。 始祖ブリミルの再来だとか言われて、ロマリア教皇になれだのなんだのと信仰され始めたのが、たしか半年後。 頼まれたので四つの四とやらを増産して四百の四(ルイズに全ての使い魔のルーンフラグを立てた)にして卒倒されたのだけはよく覚えている。 ちなみに現在、200台のタイガー戦車(ガンダールヴにした兵士が操縦)と共に聖地を目指している真っ最中だ。 でも砂漠は暑くて嫌だったので、MAP属性を変更して草原に変えた。だって土ぼこりで煙いんだもん。皆も喜んでるしこのぐらいはOKよね? 先行で飛んでいった50機のゼロ戦部隊(同上)はもうついている頃かな。ワールドドアでいけるフラグは立ててあるんだけど、やっぱり折角だから最初ぐらい自分の足で行かないと。 「おお! 見えてきましたぞー!」 髪の毛をふさふさにしてあげたコルベールの声が戦車の中から響いた。一緒に装甲の上に座っている皆も興奮した声を上げる。 ガンダールヴなシエスタ、ミョズニトニルンにしてヴィンダールヴなタバサも楽しそうだ。キュルケはゼロ戦に乗って先に行ったはず。 ワルドは母親を生き返らせると極度のマザコンが発症してしまい、赤ちゃんルックで「ママ、ママ」とすがり付いていたので連れてこなかった。あの光景は実に忘れたい。 「とうとう来ましたね! 何があるんでしょうか!」 「ふふん。それを確かめるのよっ!」 地平線の向こうに影が見える。はたして聖地には何があるのかしら? 召還した物 プロアクションリプレイ
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前の回 一覧に戻る 次の回 ゼロの飼い犬16 夏休みの前 Soft-M ■1 はぁー。 深く息をつく。体の中から空気が抜けていって、力も抜けていって、 湯船の縁に寄りかかった背中が段々ずり下がっていく。 首までお湯に浸かって、顎が水面に触れて、もっと下がって。 ぶくぶくぶく。目の前に泡が立ち上る。苦しくなってきたところで、顔を上げて息を吸う。 何回くらい繰り返したかな。結構な長湯になってると思う。 学院の広い浴場の湯船や調度品が、湯気に霞む向こうにおぼろげに見える。 その視界と同様に、のぼせかけて頭の中がぼやけてきてるけど、 その方が余計なことを考えられなくて良い。 長湯になってるのは、別にわたしが急にお風呂好きになったからというわけではなく。 部屋に戻りづらいから。正確に言うと、サイトと一緒に居るのが、気まずいから。 嫌なわけじゃない。むしろ、サイトと一緒に居たいって思ってる部分もあるって自覚してる。 でも、だからこそ、サイトと傍にいるのが……、怖い。 また、顔を半分くらい湯に沈める。誰にとも無しに、自分自身を隠すみたいに。 怖い? 怖いって何よ。何を怖がってるわけ? サイトを? 違う。わたしが怖がってるのは、サイトじゃない。わたしが怖がってるのは……。 水の中に、わたしの体がゆらいでいるのが目に入る。 お湯に浸されて、体の外側から内側まで温められて、体が浮き上がるような心地よさに 包まれてることから、”あの時”の事を思い出してしまった。 あの時は、お尻の下にサイトのお腹があって、背中はサイトの胸に触れてて、 それで、それで……、足の間には、サイトの……。 慌てて首を振って、水面を乱す。わたしの体はよく見えなくなった。 サイトが惚れ薬を飲んでしまう事件があってから、今日で三日目。 その前にわたしが飲んでしまった時はその後に間髪入れずに姫さまの誘拐事件が起こって、 長々と引きずっている余裕も無かったけど、今度は違う。 『わ、わたしは自分でわかってて許したんだから、後から何か言わないでよね!』 目を覚まして、モンモランシーが置いていってくれたらしい解毒薬をサイトに飲ませた後、 わたしはサイトが何か喋る前に一気にそう言って黙らせた。 サイトは惚れ薬の効果があったときとは違う顔で真っ赤になって、でも自分のしたことに 何か弁明することはなくて、一言だけ、『ありがと、嬉しかった』なんて言ってきた。 その日はもう、サイトと顔を合わせられなかった。 ううん、その日以来、まだ一度もサイトとはまともに顔が合わせられてないかも。 サイトの姿を見て、あの時しちゃったことを思い出すだけで恥ずかしくて死にそうになるけど、 それだけの理由じゃない。もっと深くて、向き合うのが不安な気持ちが胸の中にある。 わたしが怖がってるのは、その気持ち。わたしの中にあるもの。 モヤモヤする。体の中に色んな物が膨らんで、解放されずにいる。 ずっと前から、サイトに感謝の気持ちを伝えたいって思ってて、お返しをしたいって思ってて、 それができたら胸の中に溜まったモヤモヤは消えると思ったのに。 なのに、”お返し”できたはずの三日前から、モヤモヤがもっと大きくなってる。 もう、どうしたらいいのかわからない。どうしたいのかもわからない。 気付いたら、もう浴場の中には誰もいなくなっていた。元々入ったのも遅かったけど、 長湯のせいで入浴時間も終わりに近い時刻になってしまっていたらしい。 またひとつ大きく息をついて、湯船から上がる。 夢から現実に引き戻されたように、火照った身体が外気に晒されて冷えた。 誰もいない浴室を歩いて鏡の前に腰掛けると、髪をまとめていたタオルを外す。 癖のあるわたしの髪が、湿気を吸って少し大人しくなって背中に落ちた。 ちいねえさまにそっくりな、自分でも気に入ってる桃色のロングヘア。 鏡に映ったわたしの裸身は、顔から上半身まで、その髪と同じように 桃色に上気している。のぼせたせいか、それ以外の理由もあるのかはわからない。 ■2 でも髪と違って、身体の方はちいねさまには似ても似つかない。細くて、小さくて、貧相で、 まるで子供みたい。この学院に入学したあたりから、ほとんど変わってないように見える。 ――サイトに、この身体、見られたんだ。 また思い出してしまった。着替えを手伝わせてた時のことじゃない。 三日前の、”サイトが望んで”わたしの服を脱がせた時のこと。 サイトはわたしの制服のタイに手をかけて、でも勝手にほどくようなことはしなくて。 わたしはその望みを受け入れて、『知らないフリ』してあげるって宣言した。 どくん、と心臓が跳ねる。鏡の中のわたしが、顔を歪める。 サイトがわたしを求めたのはわかる。惚れ薬を飲んでしまったのだから。 元から、サイトはわたしのことを大事に思ってるって言ってくれた。 その気持ちが膨らんだのなら、わたしに”そういうこと”を望むのは、まぁ、自然なこと。 ……けど、あの時のわたしは惚れ薬なんて飲んでいない。 完全に元のままのわたしが、サイトにキスされて、抱きしめられて、 ベッドに組み敷かれて、服に手をかけられて……、それで、『知らないフリ』すると選んだ。 「……わかってるの?」 鏡の中のわたしに聞く。わかってるの? それがどういう事か。どういう意味なのか。 わかってなかった方がまだ良かった。わたしはわかっていて、はっきり意識があって……、 それでもサイトの望むことを、受け入れたんだ。 結婚しても三ヶ月はダメなこと。その前には母さまと始祖ブリミルにお伺いをたてなきゃ いけないこと。そうなる前には、姫さまに報告するって約束したこと。 ──愛する殿方にしか許しちゃいけないこと。 お風呂で温まったのとは違う熱が、体の中に灯る。あの時の気持ちを思い出してしまう。 ”それ”って、神聖な、儀礼的なものだと思ってた。然るべき時に、厳正に行うものだって。 でも、違った。もっと生々しくて、衝動的なものだった。綺麗でも幻想的でもなかった。 サイトに抱きしめられて、撫でられて、見つめられて、「好き」って言われて。 気持ちよくて、切なくて、もっと欲しくなって。サイトがわたしに求めていることが、 わたしをもっと気持ちよくしてくれることだっていうのがなんとなくわかってしまって、 サイトの気持ちに応えてあげたいって気持ちもあって……、そんな誘惑に、身を任せてしまった。 『子供を作るわけにはいけない恋人同士は、真似で気持ちを確かめ合うんだよ』 耳元で囁かれたサイトの声が蘇って、背筋が震える。真似だったら良いなんて問題じゃない。 ほんとに、そんなの、妻と夫でなくちゃ……、百歩譲っても恋人同士でしかダメなことなのに。 なのに……。 湿った吐息が漏れる。鏡の中のわたしの瞳が潤んで、視界がぼやける。 なのに、気持ちよかった。どきどきして、怖くて、なのに嬉しかった。 ダメなのに、嫌じゃなかった。それどころか、何度も思い出してしまう。 思い出すだけで、サイトにマッサージされたときみたいな気分になる。 こんな状態で、サイトと一緒にいたら、どうなっちゃうのかわかんない。 だから、サイトと顔を合わせられない。顔を合わせるのが怖い。 惚れ薬の事件が起こる前から、ここしばらく、ずっとサイトとのことで悶々としてる気がする。 アルビオンから帰ってきた頃から、ずっとかも。 こんなのやだな、って思う。サイトとは、もっと……。もっと、どんな関係でいたいんだろう。 今度はため息をついて、顔を上げる。もうお風呂を上がろうかと思って 腰を上げようとしたら、そこでやっとお尻のあたりの違和感に気付いた。 水でもお湯でもない、ぬるりとした感覚。わかってて、気付かないフリしてたのかも。 『……好きな相手を、傷付かずに受け入れるために濡れてるんだよ』 また、サイトの事を考えてたから? だから、こんなになってるの? ぞくぞくとした痺れが腰から這い上がってくる。そんなの、ダメなのに。理屈でわかるのに。 なのに、わたしの中には、”そんなこと”を望んでるわたしがいるの? 惚れ薬を飲んじゃった時みたいな、”わたしじゃないけど、わたし”が。 ■3 『ルイズと同じ。大事な相手と繋がりたいから、こうなるんだ』 下着越しに押し当てられて、わたしの手で握ってしまった、サイトの感触を思い出してしまう。 固くて、熱くて、大きくて、なのに、サイトの一部なんだってことが凄く伝わってくるもの。 触れて、擦りつけたら、頭がどうかしちゃうんじゃないかってくらいどきどきした。 『ここで、ルイズの大事なところで、俺と繋がる。そうしたら子供ができる』 「……っ!!」 繋がる。子供ができる。その言葉を反芻してしまった瞬間、腰が震え、背筋が跳ねた。 さらにたくさんの熱いものが、わたしの中からじわっと滲み出る。 サイトの、あんなに大きいので、わたしのここと。繋がる。子供をつくる。 そんなこと望んでない。そんなことするわけにはいかない。わかってるはずなのに、 考えれば考えるほど身体が熱くなる。頭の中がぼやけてくる。それが、怖い。 馬鹿、ばかじゃないの、わたし。そんなの、サイトにだってわかってることよ。 サイトは『真似させて欲しい』って言ってきた。惚れ薬のせいでわたしの事が 好きで好きでたまらなくなっちゃったサイトでさえ、今のわたしと子供を作るわけには いかないってわかってた。そんなことになったら、学院にいられないもの。だから、 『子供を作るわけにはいけない恋人同士は、真似で気持ちを確かめ合うんだよ』 そんな風に、わたしを求めた。惚れ薬のせいで苦しかったんだろうに。 ほんとはわたしと”真似じゃないこと”したかったんだろうに。わたしのことを、考えてくれて。 「ん……、真似じゃ、ないこと……」 朦朧とした意識の中で、指がお腹の方に降りていく。もし、もしもの話よ。 仮に、サイトがわたしと本気で”真似じゃないこと”をしようとしたら……、できるの? わたしのそこは熱く火照ってて、とくんとくん疼いてて、サイトに擦りつけてた時の感触を ありありと思い出せてしまう。その時のいやらしさも、気持ちよさも。 こんなに『好きな相手を受け入れるため』に濡れてる。それこそお漏らししたみたいに。けど、 くちゅ。 喉から押し殺した吐息が漏れる。サイトが下着越しに指してくれた、 わたしの割れ目の奥の、熱い潤みが漏れだしている場所に指を潜り込ませてみて……。 背筋に怖気が走り、すぐに怖くなって引き抜く。気持ち悪い。罪深い事な気がする。 自らこんなところに触れるなんて、始祖ブリミルがお許しになるわけない。 でも、少し触っただけでもわかった。こんな狭い場所で、サイトのあんなに大きいのと 繋がれるわけない。わたしの体が壊れるだろうし、きっとサイトだって苦しい。 改めて、鏡の中のわたしを見つめる。さっき見た時よりも、もっと貧相な身体に見えた。 お風呂で他の女生徒と比べると、さらに惨めな気分になる。 わたしより背が低い同級生を捜す方が大変だし、背が同じくらいの子でも、大抵わたしより 胸もお尻も肉付きが良いし……。そ、それに、他の女子は大事な所に毛が生えてるのに、 わたし、無い。みっともないから隠してるけど、キュルケとかにばれたら何を言われるか。 ……そういうのもあるから、”真似”をさせて欲しいと言ったの? わたしの身体じゃ、”真似じゃないこと”なんてできないだろうから? 鏡の中のわたしの顔が、不安に曇る。わけもない罪悪感に襲われる。 ………。 な、何で罪悪感を感じなきゃいけないのよ。わたしが不安なのは、本当にいざ結婚して 子供を作る事になった時に、できなかったら困るっていう不安なわけで、サイトは関係ないでしょ。 それに、もしかしたらサイトのが特別大きくて、他の男性のはそうでもないかもしれないし。 そこまで考えたわたしの中に、ぞくりと悪寒が走った。サイトじゃない、他の男性。 想像してしまった瞬間に、気持ち悪くなった。眼をぎゅっと瞑って、その時浮かんだ考えを 全部振り払う。自分でも、致命的な事に気付いてしまった気がしたから。 考え込んでしまったことと、たった今のことで冷えてしまった体を温めようと思って、 立ち上がって再び湯船に向かう。と、そこで。 ■4 浴場の戸が開き、誰か入ってくる気配がした。 こんな遅くに? と自分の事を棚に上げて、入ってきた人影に目を向ける。 浴室にまで杖を持ち込み、入浴時のキュルケなんかとは別の意味で 堂々と裸身を晒して歩いてきたのは、雪風のタバサだった。 「…………」 眼鏡をとっているのでいつもと違う印象の瞳が、わたしに気付いて目を止める。 そのまま半秒くらいわたしを見つめてから、タバサは湯船の方へ行き、 桶に汲んだお湯を無造作に頭から被った。 挨拶するタイミングも逃してしまい、気まずくなりながらわたしが湯船に浸かると、 タバサは先程までわたしが座っていた鏡の前まで歩いていって腰を下ろす。 備え付けのシャンプー(大抵の女生徒は自前で用意してるので、学院が用意したものを 使う生徒はほとんどいない)を適当に頭にかけて、わしゃわしゃ豪快に洗い始めた。 わたしはちいねえさまに教わったとおり、気を遣って丁寧に手入れしてるのに。 いくら髪が短いからって、ありゃ無いわよ。……でも、タバサって普段から そこらの女子よりもずっと綺麗な髪してたわね。なんか不公平な気がするわ。 体の方も、手入れというより汚れを落とす作業といった風で機械的に洗い終えると、 タバサは立ち上がって湯船の方に歩いてきた。 つい、じっと見てしまう。同学年でわたしより明らかに背が低い、数少ない生徒の一人。 なのに、わたしみたいに、身体に劣等感を持っているような素振りがみられない。 自信があるわけじゃなくて、たぶん、外からどう見えるかってことに関心が無いんだろう。 気楽でいいわね、と思うより先に、自分が情けなくなった。 わたしより小さな彼女を見ても、ちっとも安心した気分になれない。 タバサは湯船の縁をまたいで、わたしから少し離れた場所で顎まで湯に浸かる。 ……あの子もつるつるだった。こっちにはちょっと安心したかも。 彼女は額に張り付いた髪を直すと、わたしの方には注意も払わず目を閉じた。 相変わらず、何を考えてるのか想像もできない。 今思い出したけど、前々から、彼女にはちょっと気になるところがあった。 この子、ちょっと前までは他人と会話もろくにしてなかったのに、 いつのまにかサイトに対しては妙に協力的になってたのよね。 宝探しの時にうち解けたっていうけど、何があったのかサイトに聞いてもはぐらかされる。 わたしの詩作の手伝いをしてくれたり(結局無駄になっちゃったけど)、 サイトが惚れ薬を飲んだ時は、頼んでもいないのに薬の買い出しに行ってくれたり。 それに、詩作の必要が無くなった後も、この子とサイトが一緒にいるのを何度か見た。 この子とサイトに、何があったのか気になる。なんで教えてくれないのよ。 さっきまでとは違う不安にムカムカしてきて、目を閉じたままの彼女をじっと見つめる。 子供みたいに小さいけど、気品が感じられる凄く整った顔立ちをしてる。 湯の下に揺らいで見える身体も、細いなりに均整がとれていて、幼児体型ってわけではない。 まるで精巧な美術品みたいな容姿は、わたしから見ても綺麗だと思う。 そんなタバサは、手を伸ばせば届く湯船の縁に、自らの杖を置いている。 確か彼女は、トライアングルクラスの風のメイジ。学院の生徒の中では一、二を争う実力者。 そのことを思い出して、わたしの中に嫌な感情が生まれる。 魔法が使えなかった時は、わたしにとってドットだろうとラインだろうと、他のメイジは 等しく劣等感の対象だった。けど、虚無魔法や簡単なコモン・スペルが使えるようになった今、 タバサが突出して優秀だということがよくわかる。 わたしの虚無は思い通りに使うことも出来ないし、限られた人にしか明かせない。 自分の力で習得したという実感が薄いし、周りからはゼロのルイズだと思われたまま。 けれど、彼女はわたしよりも年下なのに学生のレベルを越えた魔力を持ってる。 誰もが認める秀才。汚い僻みの気持ちが、胸の奥をちくりと突いた。 そんな彼女が、なぜ体面的には平民でしかないサイトと親しくなってるんだろう。 「……あの、タバサ?」 そう思ったら、深く考える前に勝手に口が開いてしまった。 ■5 「なに?」 タバサは急な呼びかけに驚いた風も無く、ゆっくり瞼を上げて鮮やかな青い瞳でわたしを見た。 まるでわたしが何か話しかけるのを予想してたみたい。逆にこっちの方がたじろいでしまう。 「あ、えっと、その……。聞きたいんだけど、あなた、わたしの使い魔と何があったの?」 「質問の意味がわからない」 聞くと、タバサは微かに首を傾げた。本当なのか、とぼけてるのかこの無表情じゃわからない。 「だから、あなた何かとわたしたちに協力してくれるでしょう。それは有り難いんだけど、 どうしてそんなことしてくれるのか知りたいの。この前は、『借りがある』なんて言ってたし」 「借りは、ラグドリアンでの一件。水の精霊と対決することを避けられた」 「それだけじゃないでしょ。その前にも、わたしの詩作の相談に乗ってくれたじゃない」 思わず湯船の中で小さく詰め寄ってしまうと、タバサは深い息をついた。そして、 「……あなた、戦争に従軍するつもり?」 いきなり話を変え、そんなことを聞いてきた。 「え……、え?」 「トリステインはアルビオンに対する侵攻作戦の準備を進めてる。少し調べればわかる」 「そ、そうじゃなくて……!」 タバサの言葉に頭が混乱する。姫さまが本格的な戦争の準備をしてることは聞いてる。 そのために、わたしの虚無の力が必要になるかもしれないという話も。 けど、タバサからしたらわたしはただの魔法学院の生徒で、しかも女子。 わたしが従軍する可能性なんて思いつきもしないはずなのに。 いや、違う。彼女はわたしの使い魔であるサイトがそこらのメイジよりも強いことを知ってるし、 姫さまの誘拐事件の時には、彼女の目の前で虚無魔法まで使ってしまった。 わたしがただのゼロのルイズじゃないってことは察してるのかも。どうしよう。 「そう考えてるなら、危険」 わたしがどう答えたらいいのか迷ってるうちに、タバサは次いでそう言ってくる。 「え?」 「あなたもあなたの使い魔も、高い確率で命を落とす。あなたが、下手だから」 淡々と命を落とすとか下手とか言われて、怒るより先に呆然としてしまった。 「扱える魔法の数や威力とは別の所。判断力、動き方、タイミング、状況の把握、 どれをとっても下手。彼に守ってもらうにしても、あなたが荷物であっていいわけがない。 あなた自身のためにも、彼のためにも」 「な……!」 さすがに言い返そうと思ったけど、言葉に詰まる。この前の事件のことを思い出したから。 タバサやキュルケがいなかったら、わたしを守ってくれるのがサイトだけだったら、 ウェールズ皇太子やその部下の騎士の魔法を止めきれなかっただろうことを。 「彼と自分の力を生かすことを、もっと真剣に考えた方が良い」 タバサは最後にそう言って、湯船から上がった。 傍らの杖を拾うと、真っ直ぐに浴場から出て行こうとする。 「ちょ、ちょっと待ってよ! それはいいけど、わたしの質問の答えは……!」 慌てて彼女の後ろ姿を呼び止めると、タバサは振り向いて一瞬だけわたしを見つめ、 そのまま何も言わずに脱衣所に出てしまった。 その時のタバサの視線。「わからないの?」とでも言いたげだった。 タバサがわたしに言ったのは、今のままじゃわたしとサイトが危険だっていうこと。 わたしがただ守ってもらうだけの存在であってはいけないということ……。 「……タバサも、サイトに守ってもらった……?」 気付いて、呟く。さらに言うなら、『わたしならば、あなたよりは彼の負担にならない』 そんな意味も込められていたような気がする。 ずきん、と胸の奥が痛んだ。腹立たしいとか、モヤモヤするとか、そういうんじゃなく……、 もっと重い、不安や焦燥みたいなものの種が、そこに芽生えていた。 つづく 前の回 一覧に戻る 次の回